2022.05.26

【サイまな読書部】人類と感染症の関わりを学ぶための7冊

前回トピックスで紹介した鵠沼高等学校の生徒向け特別講義「ヒトは感染症とどのように付き合ってきたのか」では、横浜薬科大学の川嶋剛教授が本テーマへの理解を深めるために参考になる書籍を紹介してくれました。
ここではその7冊の本を紹介します。どの本も一般の方にも分かりやすく書かれているので、入門としてとてもおすすめです。

生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像

著者武村 政春
出版社講談社ブルーバックス(2017)

数十億年前、いま最も注目を集めるあるウイルスの祖先が誕生した。ヒトや細菌とは遺伝的系統を異にする彼らが、私たちの〈共通祖先〉に感染し、生物の発展・繁栄に不可欠なDNAや細胞核をもたらした!?そして、その子孫たる「巨大ウイルス」が明らかにする、生命と進化の知られざるからくりとは?日本初の巨大ウイルス=トーキョーウイルスの発見者が語る、生物進化のアナザーヒストリー。

ヒトがいまあるのはウイルスのおかげ!
役に立つウイルス・かわいいウイルス・創造主のウイルス

著者武村 政春
出版社さくら舎(2019)

ウイルスはわれわれ生物の創造主!?
ウイルスと聞くと「病気の原因」と思いがちだが、病気を引き起こすウイルスはほんのわずか。ほとんどは無害だ。われわれの身のまわりにはそんな知られざるウイルスがいっぱいいる。細菌と混同されがちだが、ウイルスは生物ではなく、「生物と物質のすきま的存在」とされる。だが遺伝子をもち増殖していく。極小サイズで基本形は正二十面体。毒にも薬にもなる。
そんな不思議なウイルスの基礎知識から、2003年に発見された「巨大ウイルス」がひらく新しい生物進化の可能性まで、巨大ウイルス研究の第一人者が一般向けに楽しく面白く語る。ヒトゲノムの半分以上はウイルス由来だ。「ウイルスはわれわれ生物の創造主なのか? われわれはウイルスが増えるための存在なのか?」――読み終わったとき、世界の見方が変わるかも!?

ウイルスは生きている

著者中屋敷 均
出版社講談社現代新書(2016)

新型インフルエンザやエイズなど、人類を脅かす感染症を伝播する存在として、忌み嫌われるウイルスだが、自然界には宿主に無害なウイルスも多い。それどころか、宿主のために献身的に尽くすけなげなウイルスたちも多い。
実は、私たちのDNAの中には、ウイルスのような遺伝子配列が多数存在し、生物進化に重大な貢献をしてきたことが近年の研究でわかってきた。極言すれば、我々の体の中にウイルスがいるから、我々は哺乳動物の「ヒト」として存在している。
果たしてウイルスとは何者なのか?生物の進化に大きな役割を果たしたウイルスは「ただの物質」なのか? それともやはりある種の「生命体」と見なすべきなのか? 一気読み必死のサイエンスミステリー。

人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて

著者加藤 茂孝
出版社丸善出版(2013)

ウイルスは人に感染し、社会制度、政治、社会心理など極めて関係が深い。2003年SARS、2009年「新型インフルエンザ」をはじめ次々と新しく出現する新興感染症による緊張と混乱は人々の不安を増した。
感染症が社会に対していかに大きな影響を与え、いかに歴史を動かして来たかを本書で明らかにする。
なぜ、感染症は絶えないのか?なぜ新たな感染症が出現してくるのか?人類はどのように感染症と戦って生き延びてきたのか?科学はこの見えないものへの怯えをいかに減らしてきたか?そして、我々は、どこへ行くのか?
本書の内容は、感染症を40%、歴史を40%、残り20%をその間を繋ぐ社会心理的なものに充てた。感染症の歴史は、人々の不安の歴史でもある。明治期より近代微生物学の進展がその不安を減らしてきた。それでも、肉眼で見えないことへの恐怖は消えない。

続・人類と感染症の歴史 新たな恐怖に備える

著者加藤 茂孝
出版社丸善出版(2018)

死に至る病がすぐそこにある。2014年には「エボラウイルス病(エボラ出血熱)」によって西アフリカを中心に1万人を超える人が亡くなり、日本国内でも感染の疑いのありといわれて緊張が走る瞬間があった。また、「梅毒」として報告された患者数は調査が始まって以来最多となっている。
実は感染症は案外身近に潜んでいて、人間のすきを狙っているのかもしれない。
本書では前作とは異なる、現代日本でも身近な8つの感染症について、どのように感染症が発生したのか、広がる感染症に医療や行政がどのような対策をしてきたのかをひもとく。好評だった医学や生物学の専門知識がなくても読み進められる語り口はそのままに、知っておきたい感染症の知識が詰め込まれている。

感染症と文明 共生への道

著者山本 太郎
出版社岩波新書(2011)

感染症との闘いは人類に勝利をもたらすのだろうか。防疫対策による封じ込めは、大きな悲劇の準備にすぎないのかもしれない。共生の道はあるのか。感染症と人類の関係を文明発祥にさかのぼって考察し、社会が作り上げてきた流行の諸相を描き出す。共生とは理想的な均衡ではなく、心地よいとはいえない妥協の産物ではないか。

「新型コロナワクチン」とウイルス変異株

著者五条堀 孝
出版社春秋社(2021)

メッセンジャーRNAワクチンは、感染予防・発症予防・重症化予防の三拍子揃った新型コロナワクチン。抗ウイルス効果のメカニズムと安全性・有効性・変異対応力について、遺伝学の第一人者がわかりやすく説く。
人類とウイルスとの闘いのなかで、私たちはどう対応していけば良いのか。変異株にも対処できる「ウイルス進化」の知見で探るゲノム進化学の最前線。

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