2023.04.10

未来の医療を変えていくために プロジェクトCHANGEと高校生のワークショップ

急速に少子高齢社会を迎えている日本では、この先さらに長期的に看護を必要とする方が増えていくと見込まれています。しかし、現状のままでは医療インフラや医療従事者が不足していく状況が想定されるため、社会全体として医療機関に負担をかけないライフスタイルや仕組みに変化していくことが求められています。
このような状況を背景として、神奈川県川崎市の医工連携研究施設ナノ医療イノベーションセンター(iCOMN)は、様々な大学・企業の研究機関や川崎市看護協会・訪問看護ステーションとともに、昨年10月からあらたなプロジェクト「CHANGE」をスタートしました。“CHANGE”とは、そのネーミングに込められているように、ヘルスケアや医療看護ケアの負担を、先端テクノロジーやシステムを開発することによって軽減し、社会を変えていくことを目指しています。


3月初旬、CHANGEのプロジェクトメンバーが川崎市立川崎総合科学高等学校(川崎市幸区)の生徒たちと一緒に「身近な人をどう見守る?~将来の看護のありかた」をテーマにワークショップを行ないました。
参加したのは科学科2年生の36名。
CHANGEプロジェクトからはプロジェクトリーダーの一木隆範教授をはじめ多彩なメンバーがファシリテーターとして参加し、高校生とのディスカッションをサポートしました。

今回高校生のサポートで参加してくれたプロジェクトCHANGEの皆さん

五十嵐歩(東京大学 医学部准教授)

一木隆範(東京大学 工学部教授)

主濱瑠純(第一生命ホールディングス株式会社 イノベーション推進ユニットマネジャー)

内田建(東京大学 工学部教授)

高岡茉奈美 (東京大学 医学部特任助教)

山上剛史(コールドクター株式会社 事業戦略部長)


6つの小グループに分かれてのディスカッションで、

① 今のままだと、どんな暮らしが待っているのかを想像
② 理想的な暮らしを創造
③ その暮らしを実現するために「あったらいいな」と思うもの。

この順で意見出しが行なわれました。


Q.今のままだと、どんな暮らしが待っているのか?

(生徒の回答より)

  1. 少子化、人口減少、過疎化、若い人が出て行く、小さな国になっていく
  2. 海外の人が入ってくる
  3. 物価の上昇、経済が厳しくなって貧富の差が激しくなる、格差
  4. 高齢化、老老介護、介護職が減る、若い人の負担が増える
  5. 温暖化、異常気象
  6. 女性の社会進出が進んで晩婚化、成婚率の低下で孤独死
  7. ゴミ問題、ゴミを捨てる場所が無くなる

日々のニュースを受け止め、様々な未来を想像していることがうかがえます。
そしてセッション2では、「それでは、自分にとってどんな社会が理想なのか」について創造し合いました。

Q.どんな暮らしが理想的か?

(生徒の回答より)

  1. ストレスの無い社会、生活
  2. 自分の生きたいように生きられる、やりたいことを諦めなくていい世界が理想
  3. 高い年収が欲しい
  4. 社会保障が充実して助けてもらえる
  5. 病気にならない、いつでも病院にアクセスできる
  6. 平等と公平のバランス
  7. 高齢者も子どもも良い感じの人数に
  8. プラスチックをなくせる、消費者に手の届く3R義務教育でリサイクルを教える
  9. 高齢者が健康であれば子どもに教える
  10. 免疫が高まり、病気にかかりにくくなることで医療負担が減る
  11. 治安が良い社会

このワークショップでは、こうありたい、と願い、考えることが大切です。
最後に「理想的な暮らしを実現するために「あったらいいな」と思うもの」について考え、6グループがそれぞれまとめを発表しました。

Q.理想的な暮らしを実現するためにどんなものがあると良い?

(生徒の回答より)

1班 (五十嵐)

  1. 身体に負担の少ない抗がん剤
  2. 認知症になったときの充実した保険制度
  3. ナースコールを押すのでは無く、様子で分ってもらえるような装置
  4. 安価で人の健康状態がわかり、身近な人が119を知らせるウエアラブル端末
  5. 行きたいところに自動で行ける車椅子や義足
  6. 脳波を呼んでコミュニケーションがとれる仕組み

2班 (一木)

  1. がんなどをかかりにくくするワクチン 早期発見が出来るように
  2. 老化を防ぐ薬
  3. どこへでも行けるもの
  4. 老化してもコミュニケーションを取れるように言葉で無くても伝えられる装置

3班 (主濱)

  1. 一人一台、健康管理が出来るウエアラブル端末を持つ
  2. 一家に一台AIロボット 病院予約や必要なものを買ってもらえる

4班 (内田)

  1. 病院に長く入院すると足腰の筋肉が弱るのでそれを防ぐのが問題
  2. 老人ホームの先入観を悪くしない正しい情報を
  3. 正確な情報を手に入れて提供する何を基準に情報を判断するのか信頼できるAIや第3者に任せる
  4. 判断基準がAIが正しく情報を判断してくれる、(国が)保証
  5. 病院に対する先入観をもたずに最大限に利用できるようにする
  6. 医療版のアップルウォッチ体調が悪いときに判断してくれて、薬も手配してくれる
  7. 指紋認証や顔認証で体調をモニタリング
  8. 全て機械がやるのではなく、人間が動く余地も残し、パワードスーツを開発できると良い

5班 (高岡)

  1. (高齢者やお金に関する課題に対して)教育費を9割保証してもらえると子育てしやすくなる
  2. 家事をしてくれるロボットやサービスが増えると少子高齢化が解決する

6班 (山上)

  1. グローバル化、IT化が社会問題を解決
  2. 病院に行かなくても、どんなものでも治療出来る万能薬、家庭で使える“お医者さんセット”など、病院に行かなくても家の中で解決出来るものがあると便利
  3. また、力の負担がなくても介護するパワースーツや、エアーハンド遠隔で診察できるように
  4. 空飛ぶ救急車など、いまは現実的で無くても将来的に実現できるかもしれない


まとめとして一木教授は今回のセッションで挙げられたような「病気を治す装置」など、自由な発想で信念を持って考え続けていくことで必ず実現すると述べ、社会を変えていく若い世代への期待を語ってくれました。

川崎市立川崎総合科学高等学校
http://www.kst-h.ed.jp/

公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター “プロジェクトCHANGE”
https://change.kawasaki-net.ne.jp/

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