コラム
2024.09.20
ハマヤクサイエンス研究会第3回学術発表会開催
発表レポート【環境系】
環境系の発表は7題ありました。
研究タイトル「日光の水 ~化学・生物的視点からわかる水質~」
栃木県立小山高等学校
塚原真汰さん、大谷侑輝さん、池田琉莧さん、染谷凛華さん、中島彩吹さん、升ひな実さん、溝口瑤子さん
奥日光(湯の湖流入河川、湯滝下の湯川)と栃木県小山市(思川)にある3河川の水質を化学的に調査し、生物的視点での調査との違いを確認することを目的として、本調査を行いました。各地点でパックテストと生物採集を行い、化学的数値と生物調査を比較しました。実験結果より、パックテストで評価した科学的な川の汚さと生物調査による生息する生物の評価には違いがあることがわかりました。水質は周りの環境に大きく影響されやすく、周囲の温泉によって、化学的な数値が変化してしまうことが原因だと考えられます。
PI-02
研究タイトル「タナカに紫外線防止効果はあるのか」優秀賞
山脇学園高等学校
矢ヶ崎葵さん、渡邉陽日さん
オキシベンソンを含む日焼け止めがサンゴの白化に関与する可能性を考慮し、新しい日焼け止めの材料としてミャンマーでスキンケアに使用されているタナカ(Limonia acidissima)の紫外線防止効果の検証を行いました。3種の条件(日焼け止め、タナカ水、無処理)で処理した蓄光ビーズへ紫外線ライトを当て、MATLABで画像解析した結果、タナカには紫外線防止効果がみられず、紫外線集光効果があることが確認されました。今後はタナカの形状観察などの検証を行い、農薬の代替としての可能性を検討していきます。
優秀賞おめでとうございます
日焼け止めの新たな材料として研究テーマに選んだタナカが、逆に紫外線を集める性質を持つことが明らかになり、とても驚きました。科学的に検証することの大切さが光る研究でした。今後の展望であるタナカを使用した農薬、気になります!(編集部より)
PI-03
研究タイトル「「可愛くなりたい」は環境に悪い!? 2024~あなたの日焼け止めがサンゴを傷つけているかも!?~」
山脇学園高等学校 サイエンスクラス2年
坂井彩果さん、濵中千聖さん
オキシベンゾンやメトキシケイヒ酸エチルヘキシルは市販の日焼け止めに含まれている成分であり、サンゴの白化現象の一因とされています。これらが身近な環境水中にどの程度含まれ、どのような悪影響を与えているかの調査を行いました。多摩川下流域で採取した河川水から試料液を得、LC/MSでBP-3とEHMCの検出を試みた結果、試料液及び未処理河川水からはBP-3とEHMCの検出はできませんでした。試料の濃縮過程や保管法、紫外線暴露の影響が考えられるため、さらなる網羅的検出と毒性評価が必要だと考えられます。
PI-05
研究タイトル「縦渦リニアドライブの効率化」優秀賞
東京都立多摩科学技術高校
長田隼坪さん、伊藤寛人さん、筒井周子さん
縦渦リニアドライブにおいて、最も発電に適している羽根の枚数・形、素材条件を調査しました。シミュレーションをかけ、羽根の枚数を変えたそれぞれのモデルの回転数を確認し、角速度を評価し、卓上ボール盤を用いて3Dプリンターで作成したモデルで風速の測定を行いました。羽根の枚数が増えると角速度が低下し、トルクと発電量が増加する傾向が見られました。今後は、3Dプリンターで作成したモデルにモーターを取り付け、風を送りながら効率的な羽根の枚数とリングとの距離を測定する予定です。
優秀賞おめでとうございます
シュミレーションによる検証と、卓上ボール盤で3Dプリンターによって作成したモデルを回転させた実験による検証の両方を連動させて実施しており、非常に力の入った素晴らしい内容でした。発表を聞きながら、実験風景を実際に見て、風を感じたいと思わせる研究です!(編集部より)
PJ-01
研究タイトル「牛乳からプラスチックをつくる」
湘南学院高等学校
上田凜子さん、神葵さん、田澤風翔さん、松男コウナさん
小さな容器のポイ捨て問題を解決するため、放置しても溶けて分解されるプラスチックの作成を目的として実験を行いました。「牛乳から作るプラスチック」に着目し、牛乳を温めて酢で分離し、コーヒーフィルターと油こしで水分と脂肪を取り除き、型にいれて乾燥させました。無脂肪牛乳は早く固まりましたが、形が不完全でした。普通牛乳は固まるのに時間がかかり、カビが発生しました。牛乳を使ったことによる異臭の問題もあり、カビの問題と共に今後検討が必要です。
PJ-02
研究タイトル「カビ色素を用いた色素増感太陽電池の可能性」優秀賞
安田学園高等学校
滑川彩実さん、鈴木達裕さん
いもち病などのカビによる病気で廃棄される稲を有効利用するため、繁殖力の強いカビの色素を使った色素増感太陽電池の作成を試みました。色素増感太陽電池は、負極に色素を塗布し、紫外光と可視光を吸収して発電します。培養した紅麹、黒カビ、青カビ、黄麹、そして、屋外採取したいもち病菌の色素を抽出して負極に吸着させ電力を測定したところ、いもち病菌が最も高い電力を示しました。実験結果より、新たなカビの付着は必要ないことが示唆され、今後はいもち病菌以外の稲の病原カビも検討し、更なる調査を進めたいと考えています。
優秀賞おめでとうございます
付着させるカビの培養でとにかく苦労した本研究、頑張って培養したカビを稲に付着させて実験を行ったところ、病原カビ自体が一番高い電力を示したという結果がこれぞ研究の逸話!といったお話でとても面白かったです。やはり実験してみなければ結果はわかりませんね!素晴らしい!(編集部より)
PJ-03
研究タイトル「知らないうちにプラスチックを食べている?」
山脇学園高等学校2年 サイエンスクラス
杉本結さん、笹岡日菜乃さん
マイクロプラスチック(MP)は、直径5mm未満のプラスチック破片で、生物濃縮や他の化学反応を引き起こす原因となる懸念があります。本研究の目的は、身近な水産物にMPが含まれているかを明らかにすることです。マアジ、アサリ、スルメイカを試料とし、10%KOH溶液で溶解後、プランクトンネットでろ過し、FT-IR解析によりMPの検出を試みました。結果として、MPの1種であるポリプロピレンの有無は確認できませんでした。今後、精製方法を改良し、目視による確認後、SDNやFT-IRにて再調査を行う予定です。
PJ-05
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