コラム
2024.12.13
高校生が考えるウェルビーイングとは?◇大船高校・藤沢清流高校 ~新湘南ウェルビーイングフェスタ2024
11月23日、神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)にて、施設を一般開放したイベント「新湘南ウェルビーイングフェスタ2024」が開催されました。
“ウェルビーイング”とは、「肉体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態」を指す言葉で、健康長寿社会を目指す上で「幸福」であることも大切な要素として加えた指標となっています。
このイベントではまさに創薬科学の先端的なイノベーション拠点である湘南アイパークを舞台に、近隣の新湘南エリアに暮らす生活者とともにウェルビーイングについて考え、学び、体感すること目的としており、様々なワークショップや実証実験、展示発表などが行われました。
高校生が考える10年後の地域のウェルビーイング
会期中のプログラムの一つとして、大船高等学校、藤沢清流高等学校の2校の生徒によるワークショップが行われました。このプログラムは横浜国立大学の下野誠通准教授の企画したプログラムで、「10年後のウェルビーイングを考える」という題材に沿ってそれぞれの高校の生徒が調査研究に取り組みました。
ワークショップ会場ではその研究成果を発表するとともに、当日参加した市民の皆さんとともにディスカッションを行いました。
リアルとバーチャルのコミュニケーション 大船高等学校
大船高校からは生徒会執行部の皆さんが登壇。「未来のウェルビーイングを考える」というテーマに対して、当初生徒会メンバー内では各個人でバラバラなイメージが示されましたが、共通する項目は「コミュニケーション」であることが導き出されました。そこで文献資料による調査に加えて校内生徒にアンケート調査を実施。高校生の実態としてLINEとインスタを中心にしたバーチャルコミュニケーションが主流になっていることについて明らかにしました。また調査結果から対面(リアル)とバーチャルでのコミュニケーションのメリットとデメリットについてまとめました。
子育てしやすい街とは?? 藤沢清流高等学校
藤沢清流高校では2年次の生徒全員で課題について意見を出し合い、ワークショップ当日は選抜された有志の生徒が参加しました。10年後の自分達世代は家庭をもっているのでは…という想定から、テーマを「子育てしやすい街」に設定。現代社会での子育ての障害となる原因を挙げ、その改善策として「保育施設の増設」「商業施設の追加」「交通の便の改善」「子育て給付金の支給」「教育費支援を手厚く」「遊びやすい環境の整備」の6案を提示。実現のためには官民の地域コミュニティの協力体制が必要であるとまとめました。
高校生と市民の皆さんとのグループディスカッション
両校による研究発表のあと、これらテーマに沿って来場した市民の皆さんも参加してのラウンドテーブルディスカッションが行われました。ディスカッションの課題テーマは両校の発表に関連して2題。
◎自分が市長だとしたら、どのようなコミュニケーションの場を作りますか?
◎新湘南を子育てしやすい街にするにはどうするべきなのか?
複数のグループに分かれて高校生と市民との対話が行われ、色々な意見が交わされました。
ディスカッションを踏まえ、各グループで出された意見がまとめられました。
課題:自分が市長だとしたら、どのようなコミュニケーションの場を作りますか?
- リアルコミュニケーションの案として大磯で行われたオープンガーデンという取り組みや、キッザニア東京の新湘南版をやったりしてはどうだろう
- 子どもの意見を政策に反映し、その様子がバーチャルでも見られるようにする
- マスト(しなければならないこと)を作ることでコミュニケーションが拡がる
- リアルとバーチャルの使い分けが大事。海外や遠く離れたところにいる人とコミュニケーションがとれる時代だからこそ家族や友人など近くに居る人としっかり会って話しをすることが大切。
- リアルとバーチャルのミックスが必要になってくる。世代間の交流が大事で、世代間をミックスしてバーチャルやリアルのコミュニケーションをとれるようにする
また問題を提起した大船高校でも提案を1つ用意していました。公衆電話のように街中に設置される端末から誰でも自己負担無しでバーチャル空間にアクセスできる環境をつくるというアイデアを披露してくれました。
課題:新湘南を子育てしやすい街にするにはどうするべきなのか?
- 最近子どもが自由に遊べる空間がなくなってきているのは、問題があったときに誰が責任を取るのかという背景から、遊具が減らされている現状がある。大人が寛容な姿勢で子どもを見守ることが必要なのではないか。
- 新湘南地域には病院などのインフラは整っている。子育てをしやすくするには親と子の距離を近づけることが大事で、居住地域に企業をたくさん誘致して、近くで働ける場所を増やして親と子の距離を物理的に近づけるといい。
- 他国と比べて日本には子育てに必要な環境は整っている。しかし会社から家族へのサポートは少ない。給与が少ない。企業の保育園などの拡充が必要になってくる。
- スイスやフィンランドなどでは17歳まで交通料金が無料。このように交通料金の改正に踏み込んでも良いのではないか。
- 空き家をDIYして利用して集い、コミュニケ-ションの場にすることで子育てにも教育にも良いことになるのではないか。
様々な意見を受け、総評として子どもや子育て世代のための施策はさまざま用意されているが、子育てをしている当事者や子どもからの視点で物事を考えたり発信したりすることが必要ではないかというまとめになりました。
ワークショップを終えて
中心となって活躍した両高校の生徒の皆さんに感想を聞きました
- 普段身の回りの友人や親の話だけでなく、さまざまな所属の大人や社会人の意見を聞くことができ有意義なディスカッションだった
- 外国人の参加者からは日本社会への見方が話されていて、今までにない視点での意見を聞けた
- 立場の違いで逆の意見がでてくるなど、まとめるのが難しいこともあるが、多様な見方を尊重することも大事だと感じた
何度も仲間と意見を交わして調査結果をまとめて発表に臨み、社会人の方々とディスカッションを行うのは、なかなか大変な体験だったと思います。しかし皆さん緊張しながらも見事にやりきり、とてもよくまとまったワークショップとなりました。皆さんお疲れ様でした!
今回のような課題に向かい合って考え抜いた経験は、きっと色々な形で皆さんの未来を良くすることに繋がっていくはずです。
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