コラム
2025.12.24
【イベントレポート】健康で幸福な未来について考える ~新湘南ウェルビーイングフェスタ2025


11月29日、神奈川県藤沢市の創薬開発イノベーション拠点、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)にて、一般市民向けのイベント「新湘南ウェルビーイングフェスタ2025~ウェルビーイングって何だろう?今と未来のヒントがここにある~」が開催されました。
「ウェルビーイング」とは「肉体的にも精神的、社会的にもすべてが満たされた状態」を指す言葉で、これからの医療福祉や社会づくりにおいて重要視されていくキーワードです。
昨年に続き2回目となるこのイベントでは、施設の屋内外を会場に、ウェルビーイングの実現をテーマにした企業や大学による製品システム、サービスの紹介や、医療、テクノロジーの専門家と市民が共同参加できるワークショップなどが行われました。
研究者と市民が創薬に共同参画する時代へ
イベント内では「お腹の病気をもとに考える、患者さんと市民が一緒に作る未来のクスリ ―患者・市民が製薬企業とできること―」と題したワークショップも開催され、創薬開発に携わる研究者と患者、一般生活者とが共同で創薬に関わることについて各立場からの講演が行われました。
湘南アイパーク内のコミュニティ「WorldCafe」メンバーでマルホ株式会社の研究者である平野尚茂さんは、前世紀からの病気と医薬品開発の歴史的背景を解説し、2010年代ごろからは患者の生活や人生への負担を取り除くための心身を含めた最適化を求める医療の時代になったと説明。これからは患者と市民も創薬開発に一緒に参画することが求められると述べました。
また、患者側の声として炎症性腸疾患(IBD)の患者と家族のコミュニティ「Gコミュニティ」の運営や、情報発信を行う株式会社グッテの宮﨑拓郎さんと、コミュニティのメンバーで自身もクローン病患者である小林由佳さんが登壇。小林さんは持病と向き合いながら学業や仕事を続けてきた実体験を元に、医療の問題点について語りました。
登壇者全員によるシンポジウムでは、研究者にとって患者や住民との日常生活的な話し合いこそが、研究における新しい発見につながるとの見解が示されました。研究者が抱える課題に対して、患者の生活の視点から新しい解決策やヒントが得られる可能性があり、地域のネットワークを密接にすることで、その機会を日常的に持てるようにすることが、新しい薬の種を生み出す鍵になると締めくくられました。
ボストンの事例にみるイノベーションを生む都市と市民の関わり方
創薬エコシステムの世界最先端の事例として米国ボストンの事情を紹介するセミナーも開催されました。
アイパークインスティチュート株式会社の木谷英太取締役の講演では、三菱商事のボストン支店長としての赴任経験を基に、イノベーションを生む環境について「多様なプレイヤーが連携し、新しい価値を提供する事業を創出して育成し、新陳代謝を繰り返しながら持続的に企業を育てる仕組み」が必要であると述べました。
ボストンは大学の密集を活かした技術蓄積型のライフサイエンスに強みを持ち、シリコンバレーは開拓者精神によるゼロからのIT創出、シアトルは既存産業の衰退をIT人材が救った転換型という各地の特性があるといい、共通して重要なのは、単なる産学連携に留まらず、投資家や行政、そして地域住民までが能動的に関わり、技術を社会に実装しようとする姿勢であると説明しました。そのうえで湘南アイパークを中心とした「新湘南」地域の発展にも期待を寄せました。
ウェルビーイングを「みんなで考え、体感する」様々な催し
二部構成で行われた市民参加型のワークショップ「ウェルビーイングってなんだろう」では、前半で自分自身・地域・家族といった人目線でウェルビーイングについてディスカッションが行われ、様々な意見が出されました。
後半ではどんな町づくり、空間ができると幸せで生き生きとした暮らしができるかを小グループで話し合い、そこで出たアイデアを生成AIで画像化する試みが行われました。
その他、街づくりに関する企業や大学の研究発表や未来のモビリティの試乗会もあり、充実した展示内容。
昨年も出展していた横浜国立大学藤本研究室の開発している電動車いす型自律移動ロボットも、さらに性能が向上してテスト走行を行っていました。
夕刻、イベント終盤には、「音でととのうウェルビーイング」音楽療法体験会も開かれ、専門家による講義とともに、ピアニストの小林有沙さんによるピアノ生演奏が行われ、美麗な音色の余韻とともにイベントは締めくくられました。






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