2023.04.25

絶滅危惧種の海浜植物を守るために/フィールドワークで考えた公害病への視点 ~ 第5回高校生サイエンス研究発表会より

3月中旬、第一薬科大学・日本薬科大学・横浜薬科大学の共催による「第5回 高校生サイエンス研究発表会2023」が開催され、全国から参加した高校生が各大学会場やオンラインで、日頃取り組んでいる科学研究の成果を発表しました。
ここでは、3月21日に横浜薬科大学会場で行われたポスター発表の中から2題を紹介します。

研究タイトル「海浜植物ハマボウフウの保全に向けた生育条件調査」

神奈川県立横浜緑ヶ丘高等学校 化学生物同好会
吉村桃子(2年)、小坂しえり(2年)、岡田麻央(1年)、黒田茜(1年)、菱沼花帆(1年)

海浜植物の植栽は砂の飛散による砂浜の減少を防ぐことから、砂浜保全に重要な役割を果たしています。しかし、近年、砂丘の開発や海岸侵食により日本の海浜植生は劣化傾向にあり、早急な保全が必要とされています。
そこで、神奈川県立横浜緑ヶ丘高等学校 化学生物同好会の吉村さん、小坂さん、岡田さん、黒田さん、菱沼さんは、計12府県にて絶滅危惧または準絶滅危惧種に指定されている海浜植物であるハマボウフウに着目し、本種をより早く簡単に育てる方法を確立するために、給水(海水または水道水)・土壌(海砂または混合土)条件を変えて、生育実験を行いました。その結果、ハマボウフウは土に植え、水道水を与える栽培方法が適していることがわかりました。今後の展望として、水道水と海水の配分についてなど、さらなる詳細な生育方法の条件検討を行う予定となっています。砂浜の減少を防ぎ生物多様性を守るという観点からSDGsの達成も意識している大変有意義な内容ですので、これからも応援していきたい研究です。

研究タイトル「現役高校生が水俣に行って考えたこと 水俣病の原因となった有害物質をどうしていくべきか」

神奈川学園中学・高等学校
遠藤あおい(高校1年)

神奈川学園高等学校の遠藤あおいさんは、「水俣病とメチル水銀」をテーマに、文献調査だけでなく、現地へのフィールドワークによる聞き込みなども実施した意欲的な研究発表を行いました。
メチル水銀化合物を原因として発症する水俣病について、その発生と被害拡大の経緯、水俣病の原因であるメチル水銀化合物の生物の体内、脳への蓄積、食物連鎖からの生物濃縮による影響について、文献を通した調査を行いました。そして、これらの文献調査を踏まえ、水俣でのフィールドワークを実施しました。水俣病総合研究センターなどを訪れ、「水俣ではイルカやクジラの生命活動については水銀による影響が見られなかったこと」「バンドウイルカの脳組織には水銀、そして水銀と結合性の高いセレンが共に高濃度に存在するが、神経細胞障害を示唆する所見が認められないこと」「メチル水銀の毒性に対するセレンの防御効果の可能性」などの情報を得ることができました。
今回の調査によって得られた知見を基に、水俣病について「これからどうしていくべきか」の考察をすすめていくとのことです。現地の声をとりいれた調査・研究であり、今後の発展が楽しみです。

研究をおこなった生徒はポスター発表の形式でプレゼンテーションを行ないました。当日は横浜薬科大学薬学部の学生、大学院生による研究発表も同会場で行なわれ、高校生も大学教員や大学生からアドバイスをいただく機会となりました。

この記事をシェア!

▲