2023.09.13

ハマヤクサイエンス研究会 第2回学術発表会 ~高校生の熱意あふれる研究を紹介!

2023年8月11日、横浜薬科大学主催の「ハマヤクサイエンス研究会第2回学術発表会 ~自然科学への探究・研究~」が開催されました。今回は前回の倍近くの33組もの高校生による研究グループが集まり、ポスター形式で各々の研究の成果を発表しました。
第1回よりもさらに多岐に渡る分野の研究が増え、また第2報に続く研究も多く見られました。審査員である大学教員だけでなく、発表者である生徒同士の交流も盛んにおこなわれ、非常に熱気のある学術イベントとなりました。

研究タイトル「オカダンゴムシのフンの防カビ効果の検証および農薬への応用に関する研究」優秀賞

東洋女子高等学校 SDGs 理系探究ゼミ
河北りおなさん(3年)、岩﨑芽生さん(3年)

オカダンゴムシの生態の飼育・研究の経験からフンの周りにカビが繁殖しないことに気付き、その防カビ効果による農薬開発を目指す研究に着手しました。
フンは低毒性で自然界に多く存在し、農薬として使用すればSDGsの目標15にも貢献できます。コウジカビを用いた実験から餌の種類がフンの性質に影響すること、フンには防カビ効果があり、特に卵の殻を含む餌のフンが効果的であることがわかりました。
今後は卵の殻の主成分である炭酸カルシウムを含む餌の防カビ効果を調査し、広範囲に散布できるエアロゾル化の方法の開発を目指していきます。

優秀賞おめでとうございます
農業を営む親戚から農薬の話を聞いていたため、もともと興味を持っていたという発表者。オカダンゴムシのフン抽出物の液状化に時間がかかったという実験の苦労からも、興味のあるテーマに真摯に向き合ってきたことがうかがえます。(編集部より)

PA-01

研究タイトル「動物アレルギーを有する人へのアニマルセラピーの代替方法について」

東洋女子高等学校 SDGs 理系探究ゼミ
石原麻衣さん(3年)、関夢結さん(3年)

動物アレルギーの有無に関係なく幅広い人々がアニマルセラピーと同等の心理療法効果を得られ、心身ともに健康になる方法を検討し、SDGs目標への貢献を目指しました。
犬関連の負荷(動画、画像、ぬいぐるみ接触)のストレス軽減効果について、女子高校生15人に対し、唾液アミラーゼ値で検証を行ったところ、すべての条件でストレスの軽減がみられ、犬画像閲覧の方が犬動画視聴よりも効果が大きいという結果でした。また、アンケート結果から、飼育経験のない人ほど動物の動作に対する予測の難しさがストレスとして影響する可能性が示唆されました。今後はデータを増やし、研究を進めていく予定です。

PA-02

研究タイトル「ゴーヤの苦味に関する研究③ 〜ゴーヤの苦味成分と調理方法について〜」優秀賞

横浜清風高等学校
明平愛渚さん(2年)、神谷和佳子さん(2年)

ゴーヤの苦み成分への調理による影響を検証するため、水・お湯・油の各条件でゴーヤの苦み成分を抽出し、官能試験で評価を行いました。
最も苦みがとれていたのはお湯に30分浸したサンプルであり、ゴーヤを食べ慣れていない神奈川在住者にとっては最適な処理方法だと思われます。また、今回の結果から、漢方としての効能を保ちつつゴーヤを美味しく食べるには、お湯へ10分浸し、油を使って調理するのが適切であると考えられます。
今後、味覚センサーを使った調査と油の味覚について研究を進めていきます。

優秀賞おめでとうございます
苦みが苦手で嫌いだったゴーヤを少しでもおいしく食べたい!という発表者の思いが詰まった素晴らしい研究発表でした。研究で得られた成果を元に、お弁当甲子園にチャレンジしてみたいとのこと。応援しています!(編集部より)

PA-03

研究タイトル「身近な食べ物を胃薬に変身させる!」

神奈川県立相模原弥栄高等学校 サイエンス部
笹野瑚桃さん(1年)

市販の胃薬に相当する効果を持つ機能性食品の開発を目標とし、身近な食べ物に含まれる消化酵素による糊化デンプンの分解反応を尿糖キットを用いて調査しました。
今回の実験では、胃薬とニンジン、バナナ(生・冷凍)の抽出液の比較を行いました。実験結果よりニンジンとバナナの抽出液は胃薬よりも高いグルコース濃度を示し、食べ物の方が胃薬と比べてグルコース分解活性が高いことが示唆されました。 今後は胃の上皮細胞を培養し、胃に良いとされている食べ物の成分を加えながら培養することで、細胞のpHO2量の変化などを測定する予定です。

PA-04

研究タイトル「ドクターフィッシュの知られざる生態 〜魚がお医者さん!?~」

神奈川県立相模原弥栄高等学校 サイエンス部
道下七海さん(2年)、小圷寛人さん(1年)

本研究は、ドクターフィッシュ(学名:Garra rufa )というヒトの皮膚の角質を食べる魚に焦点を当て、採餌行動に影響すると考えられる「光・色」、「振動」、「温度」、「分泌されるもの」の4つの要素から角質を認識するしくみを調査しました。
食性調査や光走性、模擬角質による採餌量の測定を行った結果、ドクターフィッシュが水槽壁面の藻をついばむ能力があり、赤と緑の光に対して負の光走性を示す傾向があるとわかりました。また、模擬角質の実験からは、乾燥したものに反応しやすいことが示唆されました。
今後は、光の受容や角質の成分、皮膚から分泌される物質などについての調査を進めていく予定です。

PA-05

研究タイトル「イモリ属の繁殖戦略 ~南西諸島のシリケンイモリに着目して~」優秀賞

山脇学園高等学校 サイエンスクラス
大久保亜美さん(2年)、中島万葉さん(2年)

日本に生息するアカハライモリが繁殖期を秋から翌年の春にかけて長期間とるという繁殖戦略が、イモリ属の北限に生息するアカハライモリに特有のものである可能性を検証するため、冬のない地域に分布するシリケンイモリの生殖器官の年周期を解析しました。
アカハライモリを低温で飼育した結果、雌のアカハライモリが低温下で受精卵を産卵し、秋に雌が取り込んだ精子が春に利用できることがわかりました。また、シリケンイモリの精巣・卵巣・輸卵管の重量変化や精子の有無を調査した結果、シリケンイモリの繁殖期は12月から5月とされているが、産卵はアカハライモリより早く、冬から始まることが確認されました。本研究より、アカハライモリの長い繁殖期は、北限の生息地に適応した戦略である可能性が示唆されました。

優秀賞おめでとうございます
発表者の「研究は細やかで地道な作業の繰り返しでばかりだが、情報が集まってきて、それらを考察できるようになったら面白くなって楽しくなってきた」というコメント通り、たくさんのデータから努力が伝わってくる研究発表でした。(編集部より)

PA-06

研究タイトル「プラナリアの走性の優先度について(第二報)」

東海大学菅生高等学校 自然科学部
髙橋更紗さん(2年)、彼ノ矢遥人さん(2年)

発表者は負の光走性、負の重力走性を持つプラナリア(Dugesia japonica)について、第一報として、プラナリアの目の有無による光に対する反応についての発表を行い、今回は第二報として、プラナリアの目の有無による重力に対する反応についての発表を行いました。
アルミで覆った試験管内でプラナリアの目の有無による重力反応を検討し、また同実験における温度による影響も検証しました。実験結果より、プラナリアには負の重力走性があるという先行研究の再現度は低いこと、切断部位と温度の関連性が示唆されました。

PA-07

研究タイトル「若者のオーバードーズ問題の対策に関する研究」

関東学院六浦高等学校
小林美彩さん(3年)

オーバードーズ問題を解決するため、薬剤師の視点で取り組みを確立することを目指し、3つの調査を行いました。①オーバードーズ患者の背景を知るためカウンセラーにインタビュー、②市販薬の過剰摂取の影響について横浜薬科大学の田口真穂准教授へインタビュー、③①、②を元にした提案対策の実現可否を薬剤師にインタビュー。
調査の結果から、悩みを持つ若者が捕まりたくない気持ちから市販薬に手を付けること、市販薬のオーバードーズは中枢神経抑制が主であること、対策として依存症患者支援施設や警告チラシが効果的であることが示されました。

PA-08

研究タイトル「植物の組織培養における微生物の有用性」

神奈川県立神奈川総合産業高等学校 化学工学部
峰尾仁湖さん(2年)、清水田遥生さん(2年)

納豆菌のように植物ホルモンを作り出す微生物の存在に興味を持ち、植物の組織培養に微生物を活用できないかと考えました。
微生物を加えて培養した植物細胞の成長速度の違いとその最適条件の検討のため、納豆菌や酵母、グルコースなどを加えた各種培地で植物の組織培養を行いました。その結果、酵母に含まれる成分には抗菌作用が示唆されたが、納豆菌では抗菌作用が確認できなかった。また、微生物による植物の成長速度への影響もみられませんでした。
植物の生育環境と微生物の活性条件を考慮し、さらに実験をすすめていきます。

PB-01

研究タイトル「最適な骨格標本の作り方 ~6種類の方法での製作に関する研究~」神奈川新聞社賞

神奈川県立川崎高等学校
須藤寿美さん(2年)

発表者は動物を解体から始め、最後までその姿を見つめることができる骨格標本を最も簡易にできる方法を探すことを目的とし、4年間、100以上の動物の骨取りを行いました。
6種類の方法(濃・排水口洗浄剤法、ミルワーム法、薄・排水口洗浄剤法、土埋没法、入れ歯洗浄剤法、アルコール法)で骨取りを試み、ネズミの骨格標本製作については、入れ歯洗浄剤法が最も簡易で適した方法であることが示されました。

神奈川新聞社賞おめでとうございます
「実験のモチベーションは命を失った生物たちの情報を未来に残していきたいという気持ち」という発表者。今後もトライ&エラーを積み重ね、美しい骨格標本製作へ邁進してほしいと思います。頑張ってください!(編集部より)

PB-02

研究タイトル「ミジンコのふ化の最適条件の検討(第二報)」

東海大学菅生高等学校 自然科学部
松井一馬さん(3年)、砂﨑陽太さん (3年)、越智崇行さん(3年)、大渕優輝さん(3年)

発表者らは、水生生物の代表として多くの教科書に掲載されているミジンコのふ化の最適条件と長期間の生存を目的として研究を続けています。
第一報ではミジンコの培養液に緑茶の希釈液を用い、緑茶に含まれる成分がふ化に影響を与えることを示唆しました。さらに、第二報では緑茶に多く含まれるカテキンに着目し、没食子酸法を用いて、培養液に用いた緑茶のカテキン量を測定しました。実験の結果、ふ化に差が出た緑茶2種の間にはカテキン量の違いはみられませんでした。よって、ミジンコのふ化にカテキン量は特に影響しないと考えられます。

PB-03

研究タイトル「モゥーと広がれ交雑種!! 〜黒毛和種に劣らない肉牛の作出を目指して〜」優秀賞

神奈川県立相原高等学校 畜産部(養牛班)
堀内桐子さん(2年)、武藤美桜さん(1年)

日本の畜産業において、ホルスタイン種と黒毛和種の偏りが問題となっており、近親交配による遺伝疾患や伝染病のリスクが増大しています。このため、異なる品種の交雑を通じて新たな牛の品種を作出する必要があります。
本研究は黒毛和種、褐毛和種、ジャージー種の畜産を行い、それぞれの交雑種(褐黒とジャー黒)の肉質と生産性を比較しました。褐黒は飼料利用性が高く、長期肥育に適しており、健康的で増体重も優れていました。さらに肉質においても高評価で、柔らかさや風味が良好でした。よって、総合的に褐毛和種と黒毛和種の交雑種である褐黒が高い生産性と優れた肉質を持つことが示されました。

優秀賞おめでとうございます
5年という長期間継続しているプロジェクトを引き継ぎ、今回の研究を行った発表者らのたゆまぬ努力が垣間見える素晴らしい発表でした。「関わった牛たちを育てていくのが楽しかった」ということで、動物と接する研究の難しさ、楽しさを存分に味わいながら、これからも頑張ってほしいです!(編集部より)

PB-04

研究タイトル「豆腐に関する研究 〜ゴーヤチャンプルのための豆腐水分量について〜」

横浜清風高等学校
高橋潤成さん(2年)、神谷和佳子さん(2年)、明平愛渚さん(2年)

沖縄の島豆腐は固めで油で炒めても型崩れしない特性を持つため、ゴーヤチャンプルに適していますが、絹豆腐や木綿豆腐では型崩れを起こしてしまいます。そこで、これらの豆腐をゴーヤチャンプルを作っても型崩れしない水分含有量を調査するために、豆腐を凍らせて水分調整を行う実験を行いました。
実験結果より、凍らせた後に解凍し、適度な水分調整を行うことで型崩れせずに食感を保つことが示され、豆腐の水分含有率を65~70%に調整することで、チャンプル用の適切な固さを得ることがわかりました。 今後は沖縄の島豆腐を用いずに、凍結時間と水分除去がチャンプルの食感や風味に与える影響についてさらなる検証を行う予定です。

PB-05

研究タイトル「オカダンゴムシの活動量とフンの量の相関について」

東洋女子高等学校 SDGs 理系探究ゼミ
石塚紫乃さん(3年)、岩井希美さん(3年)

オカダンゴムシのフンに含まれる防カビ成分を活用し、農薬不使用で土壌改良を行う目的で研究を行いました。夜間に活発な活動をすることが分かっているオカダンゴムシを用い、日照条件とフンの量の関係を調査しました。
自然条件の飼育環境(ケースA)と24時間暗期の飼育環境(ケースB)にオカダンゴムシを置き、3日ごとにフンを収集し乾燥重量を計測し、正午に活動観察も行いました。実験結果より、ケースBではフンの量がケースAに比べて多く、また活発な活動も見られました。
24時間暗期の環境ではオカダンゴムシの光周性が崩れ、活動が増加した可能性が示唆され、今後は24時間明期の条件での実験を通じて考察の正誤を明らかにする予定です。

PB-06

研究タイトル「植物のパワーでヒルからみんなを守ろう」最優秀賞

神奈川県立相模原弥栄高等学校 サイエンス部
伊藤志乃さん (1年)

人体に吸血被害をもたらすヤマビル(Haemadipsa zeylanica japonica japonica)を駆除するため、環境への懸念があるとされるヒル殺虫剤に含まれるDEETではなく、身近な植物から抽出した成分でヤマビルへの反応を検討し、環境とヒトに無害な殺虫剤の開発を目指した研究を行いました。
ミント抽出液を用いてヤマビルの反応を観察したところ、ミント液はヤマビルの忌避を引き起こす可能性が示唆されましたが、殺虫作用が確認されたDEETとは異なり、駆除効果は限られると考察されました。
今後は実験を繰り返し、ヤマビルに特異的にはたらく成分を持つ植物の選定を進める予定です。

最優秀賞おめでとうございます
身近にあるミントに着目し、環境とヒトに対して無害な殺虫剤を目指す研究で神奈川県立相模原弥栄高等学校 サイエンス部の伊藤志乃さんが最優秀賞を獲得いたしました!今年の夏は気温が高すぎてヒルがいなくなったため、実験サンプル自体がなかなか捕まえられない!という苦労を乗り越え、立派に研究をまとめあげたことに脱帽です。これからも期待しています!(編集部より)

PB-07

研究タイトル「酵母のアルコール発酵に関する研究」

三浦学苑高等学校 科学部IBコース
髙堀正也さん(3年)

本研究では酵母のアルコール発酵機構を解明するため、生成される二酸化炭素の特性を検証し、温度とpHが発酵に及ぼす影響を評価しました。酵素液を用いた二酸化炭素生成実験、温度変化実験、pH実験としてHClNaOHの濃度を変えて反応を調査しました。
酵素液実験では二酸化炭素生成による濁りが観察されました。また、温度実験では40℃が最も効果的であることがわかりました。pH実験ではアルカリ状態での酵母発酵低下と塩酸の影響が示唆され、水酸化ナトリウムと塩酸の挙動の違いも観察されました。

PB-08

研究タイトル「クリスタルバイオレットの退色反応について」

国士舘高等学校 科学研究会
島村真幸さん(3年)

発表者は塗料などに使用されているクリスタルバイオレット(CV)の退色反応について研究を行っており、今回はCVの塩基濃度を変化させることにより退色反応速度がどの程度影響を受けるのかを調べ、反応機構の知見を得ることを目的にしました。各濃度のNaOH存在下で、CVの退色を吸光度により評価しました。結果として、得られた見かけの速度定数と水酸化物イオン濃度の関係を調べると直線関係が得られたことから、真の速度定数krealはほぼ一定値となり、一般的な2次反応機構によって退色反応が進行していると考えられます。

PC-01

研究タイトル「液晶物質の電子レンジを用いたマイクロスケール合成」優秀賞

国士舘高等学校 科学研究会
冨岡紗衣さん(1年)兼子彩菜さん(1年)

表示デバイス材料として用いられている液晶物質の中でも比較的簡単に合成できるシッフ系ネマティック液晶、4-メトキシベンジリデン-4’-ブチルアニリン(MBBA)のマイクロスケール合成を試み、合成したMBBAの熱的性質を検討しました。
p-メトキシベンズアルデヒド、p-ブチルアニリン、無水硫酸ナトリウムを原材料とし、電子レンジによる加熱で反応を促進させました。実験の結果、粗収率77%でMBBAの合成に成功しました。
今後は精製方法を検討し、得られた純品により物理化学的性質の検討を予定しています。

優秀賞おめでとうございます
「現在のプロトコールにたどり着くまでに苦労した」と語る発表者。なかなか反応が進まず、ベストな分量を見つけるのが特に大変だったそうで、苦労の末に合成に成功した液晶をみて、とても感動したとのことでした。エピソード自体が研究の喜びそのもので、とても印象に残りました。(編集部より)

PC-02

研究タイトル「チンして簡単!電子レンジでエステル合成」サイエンス学びラボ賞

神奈川県立神奈川総合産業高等学校 化学工学部
加美山菫さん(2年)、山本愛菜さん(2年)

実験において危険が伴う従来の有機物の合成を顧みて、濃硫酸などの危険な試薬や操作をなるべく除いた安全で簡単なエステルの合成方法について検証を行いました。
原材料の過熱に電子レンジを使用し、濃硫酸のあるなしでもエステル合成が可能かを検討しました。今回の実験にて、電子レンジ・濃硫酸なしの条件では酢酸エチルの生成が確認できなかったことより、酢酸エチルの合成においては濃硫酸などの酸触媒が必要であることが明らかとなりました。今後は濃硫酸の代替としてゼオライトの利用について検証していきます。

【サイエンス学びラボ賞 おめでとうございます】
サンプルへの加熱がポイントである本研究において、発表者らは様々な加熱方法を試しており、ポスターからだけでは見えない様々な試行錯誤がとても興味深かったです。「エステルと水層の分離層が最初は見られなかったけど、経験で見えるようになって嬉しかった」と、実験を通しての「見る目」の成長のお話もとてもよかったです。(編集部より)

PC-03

研究タイトル「冷却時間によるビスマス結晶の形成に関する研究」

神奈川県立神奈川総合産業高等学校 化学工学部
松本碧空さん(2年)、渡瀬さくらさん(2年)

ビスマス鉱石から生成されるビスマス結晶を人工的に生成する際において、ビスマス結晶の大きさをコントロールして取り出すために、冷却時間との関係を調べ、大きさが変化する条件の特定を行いました。
各冷却時間(1000、1200、1400秒)で生成されたビスマス結晶の質量や体積を計測しました。実験の結果、1200秒の冷却時間で生成したビスマス結晶が一番大きくなることが分かりました。冷却時間が長い方が大きくなる傾向はありますが、ビスマスの量が及ぼす影響も大きく、今後は、ビスマス量を増やしたときの時間との関係も調べていきたいと考えています。

PC-04

研究タイトル「振動反応の性質の分析」

三浦学苑高等学校 科学部
タン メイさん(3年)

振動反応は、生成物と反応物の濃度が時間または反応媒体中の位置によって周期的に変化する種類の化学反応と定義されています。
本研究では振動反応の1つであるBriggs-Rauscher反応について、非線形振動メカニズムの探求と反応熱の解明、カオスが存在するかの調査を行いました。A液(30%過酸化水素)、B液(ヨウ素酸カリウム、濃硫酸)、C液(マロン酸、硫酸マンガン(II)五水和物、デンプン)を調製し、Briggs-Rauscher反応を12回実施し、EasySense2を使って反応熱を測定しました。
実験結果から、同条件で異なる3つのパターンが現れることが確認され、振動反応はカオス的である可能性が示唆されました。

PC-05

研究タイトル「金属イオンが種子植物や藻類に与える影響」優秀賞

順天高等学校 普通科理数特進選抜類型
杉本史香さん(2年)

植物の成長に不可欠な17種の必須元素のうち、微量要素である亜鉛とナトリウムの濃度変化が成長に与える影響を調べました。
亜鉛とナトリウムの濃度変化が種子植物の成長に及ぼす影響を調査し、高濃度の亜鉛および低濃度のナトリウムは成長を妨げ、根の方が大きく変化することが分かりました。また、藻類に対しても同様の実験を行い、亜鉛濃度が3ppmまで細胞数が増加、100ppmで減少が見られ、また、ナトリウムと細胞数の関連性は見られませんでした。
以上の結果より、高濃度の亜鉛とナトリウムは植物の成長を抑制し、特に根の成長に影響を与えることが示唆されました。また藻類では、今回3ppmが適切な亜鉛濃度でしたが、今後はさらに細かな濃度で研究を進める予定です。

優秀賞おめでとうございます
本研究の苦労した点は、なかなか実験結果が出なかったことだそうで、特に藻類の実験においてはピペッティングなどの手技の問題も大きかったとのこと。発表者は粘り強く研究を進め、手技の改善を行い、素晴らしい結果を残しました。これからもがんばってください!(編集部より)

PC-06

研究タイトル「ゴーヤの苦味に関する研究① 〜ゴーヤの苦味成分を分子式・構造式で考える〜」

横浜清風高等学校
正橋京汰さん(2年)、唐澤万葉さん(2年)、小松原碩さん(2年)

横浜薬科大学の李宜融教授よりゴーヤ料理と漢方薬としてのゴーヤの役割について学んだことをきっかけに、発表者らはゴーヤの苦味成分であるモモルデシン・ククルビタシン・チャランチンの構造を理解し、分子模型を用いて分子式と官能基の配置を視覚的に調査することを目指しました。
報告されている論文の構造式から分子模型を用いて分子構造を立体的に作り、分子式の特定を行いました。分子模型により、モモルデシンの分子式はC30H48O4(分子量472)、ククルビタシンの分子式はC37H60O9(分子量648)、チャランチンの分子式はC35H57O6(分子量573)であることが確認されました。
今後、横浜薬科大学の指導の下、核磁気共鳴装置(NMR)などを使用して構造解析を進める予定です。

PC-07

研究タイトル「ゴーヤの苦味に関する研究② 〜ゴーヤの苦味成分を親水基、疎水基で考える〜」

横浜清風高等学校
唐澤万葉さん(2年)、野村ちよさん(2年)、神谷和佳子さん(2年)、明平愛渚さん(2年)

横浜薬科大学の李宜融教授からゴーヤの調理法と漢方の講演を受け、ゴーヤの苦味成分であるモモルデシン・ククルビタシン・チャランチンの水と油による抽出実験を行い、これをもとに漢方の効果を保持したゴーヤの調理法の探求を行いました。市販の調理用ジューサーを用いて、ゴーヤと水、ゴーヤと食用油のペーストを作成し、その苦味を官能試験で評価しました。すべての実験で苦味を感じ、苦味の強さは水で抽出したサンプルが最も苦いという結果でした。今後は、漢方の効果を保つために、油でコーティングする方法の実験も行い、味覚センサーやHPLCを使用した分析に取り組む予定です。

PC-08

研究タイトル「平作川についての調査」

三浦学苑高等学校 科学部
石川太一さん(3年)、冨田勇斗さん(3年)、小林侑矢さん(1年)

神奈川県横須賀市を流れる三浦半島最長の河川である平作川について、「平作川の現状を知り、身近な環境の実態を探る」ことを目標に2022年より調査を行っています。
今回の研究では、平作川6ヶ所についてパックテストで水質を、目視にて周辺環境を確認し、調査しました。調査の結果、平作川は生活排水などの影響により、川を下るにつれて川の水質が悪くなり、ゴミも増えていました。また、下流は海水で薄まることと浄水場の影響で水質の改善がみられていると考えられます。

PD-01

研究タイトル「皇居のお濠・千鳥ヶ淵の水質調査と微細生物の観察」優秀賞

二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部
片山達裕さん(2年)、河野慎さん(2年) 、天野翔太さん(2年) 、中島和奏さん(3年)、志賀明輝さん(3年)、石井仁子さん(3年)、菅原瑠子さん(3年)、今村友賀さん(3年)

皇居のお濠は、玉川上水の流入が昭和40年に停止されたことで水源となり、水質の悪化が進んでいます。水質改善に向けた基礎的知見の収集のため、発表者らは、千鳥ヶ淵の水質調査を2015年より行っています。
千鳥ヶ淵から採水、水質分析、顕微鏡観察を行い、水質・状態について調査しました。調査の結果、高いCOD濃度にも関わらず、DOが安定しており、複数種の魚類が生息できていること、微生物が56種類確認され、3種のミクロキスティスが生息していることが判明しました。

優秀賞おめでとうございます
2015年から長期にわたって続く水質調査であり、皇居のお堀という場所についても非常に面白い研究です。興味深い内容のため、本研究へ質問を持つ方が多く、ポスター発表の現場もとても盛況でした!今後の研究の進捗が楽しみです!(編集部より)

PD-02

研究タイトル「食べられる容器「Ooho」の耐久性はどの程度あるのか?」優秀賞

順天高等学校 理数選抜類型
崔湘若さん(2年)、佐々木臨果さん(2年)、千葉祐奈さん(2年)

海藻などの天然由来の原料から製作される食用膜であるOohoはその生分解性の高さからプラスチックの代用候補として期待されています。本研究では塩化カルシウム水溶液の処理時間とOohoの強度との関係性を調べ、日常で活用できる耐久性の高いOohoの作製を試みました。
アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの反応時間が長いほどOohoの耐久性は高いとされていたが、今回の実験より、反応時間が高いほど耐久性が高くなるのではなく、耐久性が最も高くなる最適な反応時間があることが示唆されました。

優秀賞おめでとうございます
実験の傍らで、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムを使って、オレンジジュース、味噌汁、コーラなどをかためて食べみたという発表者ら。硬くしすぎたら食べるのが大変で、研究と同じく最適な硬さへ調整するのがとても大変だったそう。楽しい実験の風景が伝わってくるエピソードもお聞きすることができました。今後の進捗に期待しています。(編集部より)

PD-03

研究タイトル「窓の開閉方法による室内の換気効率の差異に関する研究」

東洋女子高等学校 SDGs 理系探究ゼミ
松本結衣さん(3年)

新型コロナをはじめとしたエアロゾル感染を伴う感染症対策として、効果的な換気方法を検討するため、学校教室における換気効率の最も良い窓やドアの開け方を調査しました。
蚊取り線香煙を用いた実験と実際の教室でのCO2濃度変化計測を行い、異なる窓とドアの開け方の換気効率を評価しました。ドア2-窓1が最も効果的な換気を示しました。対角線上の開け方が有効であり、風の循環による効果も示唆されました。
今後、風の循環パターンや温度による影響を検証し、さらに調査を進めていく予定です。

PD-04

研究タイトル「光の屈折率と溶液の濃度に関する研究」

湘南学院高等学校 サイエンスコース
中島瑞稀さん(2年)、原田洸太さん(2年)

溶液の濃度によって屈折率を調整できる素材の開発を目的とし、物質の濃度による屈折率の変化の調査・実験を行いました。
純水とサラダ油、塩化ナトリウムを溶かした水溶液の濃度と屈折率の関連性を検討し、実験結果より、濃度による明確な屈折率の変化は見られませんでしたが、濃度と屈折率には正の相関がみられました。
今後は実験精度の向上と、他の物質(塩化マグネシウム・塩化カルシウム)での濃度による屈折率の違いについても実施していく予定です。

PD-05

研究タイトル「アゾベンゼン誘導体の紫外可視吸収スペクトル」

国士舘高等学校 科学研究会
石田知良さん(3年)、兼子彩菜さん(1年)

異なる溶媒条件下でアゾベンゼン誘導体の紫外可視吸収スペクトルを測定し、溶媒の極性が分子構造に与える影響を検証しました。
メチルオレンジ、メチルレッド、オレンジⅠ、オレンジⅡの4種類のアゾベンゼン誘導体をトルエン、エタノール、アセトニトリル、水などの異なる溶媒で試験溶液を調整して、紫外線可視吸収スペクトルを測定しました。
実験結果より、溶媒極性の増加に伴い吸収波長がわずかに変化し、溶媒効果によって励起状態が安定化していること、水のスペクトル強度の変化から構造変化が示唆されました。
PD-06

研究タイトル「ポリビニルアルコールを用いた偏光フィルムの作成」

国士舘高等学校 科学研究会
太田智美さん(3年)、冨岡紗衣さん(1年)

本研究は、ポリビニルアルコール(PVA)をマトリックスとして延伸し、その中にヨウ素をドープした偏光フィルムを作成し、その光学的性質を調査しました。
PVA水溶液からPVA膜を作成、ヨウ素混合溶液に浸漬し、延伸してフィルムを作製しました。フィルムの光学的性質を調査した結果、ヨウ素混合溶液への浸漬でフィルムが濃い青紫色に染まり、偏光フィルムとしての特性が観察されました。また、光透過性においてオープンニコルとクロスニコルの変化が観察され、フィルムが偏光フィルムとしての機能を有していることが確認されました。

PD-07

研究タイトル「ペットボトルロケットの飛距離と飛行姿勢の関係について」

神奈川県立神奈川総合産業高等学校 化学工学部
佐藤鐘さん(2年)

本研究では、小型ペットボトルロケットの飛行性能向上を目指し、ノーズコーンやフィンの有無の影響を調査しました。
ペットボトルにノーズコーンとフィン、ノズル等を取り付け、水と空気圧を用いて飛行実験を行いました。飛距離と角度を測定し、目視による飛行姿勢についても評価しました。実験の結果、ノーズコーンとフィンを取り付けずに飛行する方が良い性能を示しました。また、フィンの取り付けによるある程度の飛行方向制御も確認されました。今後は、軽量なノーズコーンの使用やフィンの取り付け角度・大きさの調整で重心バランスを改善し、飛行性能を向上させる取り組みを予定しています。

PD-08

研究タイトル「マッチロケットの作製」

神奈川県立神奈川総合産業高等学校 化学工学部
怒木昴さん(2年)

発表者は、マッチロケットの作製に関心を持ち、マッチロケットの自作過程を通して、作成時における工夫や注意点についての発表を行いました。
アルミホイルで包まれたマッチに点火し、その挙動を調査しました。一部は不発でしたが、正しく飛翔するものもありました。不発の原因は、アルミホイルを適切に巻かなかったことや、発射台を正しく作成しなかったことによると考察されます。アルミ箔の包口に穴を開け、クリップを用いて発射台を構築する手法が望ましいことが示唆されました。

PD-09

最優秀賞「植物のパワーでヒルからみんなを守ろう」
神奈川県立相模原弥栄高等学校 伊藤志乃さんおめでとうございます

また今回は当サイエンス学びラボからも賞をお出ししました
「チンして簡単!電子レンジでエステル合成」
神奈川県立神奈川総合産業高等学校の加美山菫さん、山本愛菜さんおめでとうございました

この日はポスターセッションのほか、横浜薬科大学の教員と大学院生による「薬学とサイエンス」シンポジウムと、機能性を付加した「速筋タンパク」で話題の商品化に携わった株式会社ニッスイの内田健志主任研究員による特別講演も行われ、盛りだくさんのプログラムで充実した一日でした。
「ハマヤクサイエンス研究会」はこれからも皆さんの熱意あふれる研究発表をお待ちしています。

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