コラム
2022.02.15
高校生が考える未来の医療~超高齢社会の課題解決策とは?
現在、日本国内における65歳以上の高齢者の割合は28.8%(2020年10月1日現在)過去最高となっています。今後さらに増え続け、2050年には4割近くに達するとの予測も。
高齢化が進展していく中、現在の若者たちはその状況をどのように捉えているのでしょうか。
そこで、川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター (iCONM) の中心プロジェクトCOINS(※)では、2050年に社会の中核となって活躍する高校生によるワークショップを開催。川崎市立川崎総合科学高校科学科の2年生37名が、高齢化によって予想される健康課題と、その課題に対する科学的な解決策をCOINS研究者達と共に検討し、先ごろ開催された「第8回COINSシンポジウム」で紹介されました。
ここでは、6つの班に分かれて検討された、生徒たちの発表内容を紹介します。
※COINS:文部科学省・科学技術振興機構「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の川崎拠点。
https://coins.kawasaki-net.ne.jp/
1班
1班では、高齢化によって増大する社会保障費を課題点としました。その対策として、性格や趣味など個人情報を利用し、人と人とをつなげるシステムの導入を提案。対人関係が良好な人ほど幸福度が高いというも踏まえ、“社会の愛”によって孤独をなくし、健康寿命を延ばしていくことが高齢社会の課題解決につながると訴えました。
2班
2班は、過度に健康に執着しすぎずに健康に生きる方策として、瞬間的に健康かどうかを知ることができる技術開発や、COINSでの研究を進める体内病院(ナノマシン)を入れて病気に即座に対応するなど、AIやIOTなどの科学技術も積極的に活用していくことを提案しました。
3班
3班は、健康寿命が短く病気の高齢者が増えることで病床が足りなくなることが問題点とし、DXやウェアラブルデバイスなどの活用を提案。スマホのカメラによるCT撮影なども踏まえたオンライン診療の普及、たった一つで様々な疾患に対応できるワクチンの開発、事故などで体の一部を失ってもスムーズに取り替えられるようにする技術開発、体に害のない煙草や酒の開発によって生活習慣病を防ぐといった具体的なアイデアが出されました。
4班
4班では、高齢化による労働人口の減少を食い止めるためには健康の維持・増進が必要と強調し、具体的な方策として、今すぐにでも始められる「進化版伝言ゲーム」と、今後の科学技術の発展によって可能となる「人工義体の活用」の2つを提案しました。「進化版伝言ゲーム」は、あるモノを言葉のみで説明し、それが何かを推理していくゲームで脳の活性化を促すもの。「人工義体の活用」は老化によって維持できなくなった体の部位を義体に置き換えることで運動機能が衰えず、さらにサイボーグ化によって身体機能を強化させることも可能になるとしました。
5班
5班のテーマはズバリ「死ぬまで健康」。超高齢社会の課題として「足腰が悪い人の増加」「働き手の不足」「認知症の増加」にフォーカスを置き、いつまでも働ける仕組みづくりが必要と指摘。解決策として、定期的に健康診断や人工筋組織を移植、家の鏡で自分の体調がわかるAIの開発などを提案しました。
6班
6班は高齢化による労働者人口の減少を課題とし、高齢者も働けるように健康寿命を伸ばすことや、AIを使って機械を自動化することなどを提案。寝たきりを防いで、高齢になっても働ける体を維持し続けると共に、積極的に機械化も導入していくことの必要性を強調しました。
モデレーターを務めた iCONM・COINS研究推進コミュニケーションオフィサーの島﨑眞さんは、今回のワークショップを通じて「高校生が超高齢社会における様々な課題を自分事として考えて向かい合うきっかけになったのではないか」と話します。生徒の中には、今後の将来に不安を感じる人がいる一方、科学技術を活用した社会の可能性に希望を抱いている感触も得られたと説明。今後、科学を学んでいくことで、「夢のような技術でさえ創っていくことができる」という前向きな意識をもった高校生の活躍に期待感をのぞかせました。
川崎市立川崎総合科学高校
http://www.kst-h.ed.jp/
川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)
https://iconm.kawasaki-net.ne.jp/
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