2022.04.19

ダンゴムシは学校に何匹いる? 廃油の酸化は石鹸の品質に影響する?
~高校生のサイエンス研究発表会レポート

さきごろ第一薬科大学主催(共催:日本薬科大学、横浜薬科大学)の「高校生サイエンス研究発表会」が開催されました。

ここでは3月21日に横浜薬科大学会場で行われた発表の中から2題を紹介します。

当日は研究をおこなった生徒がポスター発表の形式でプレゼン。他校生徒や大学教諭からも質問やアドバイスが活発に飛び交う場となっていました

研究タイトル「学校にダンゴムシは何匹いるか?」

神奈川県立津久井高校 自然科学部
下村陸さん(2年) 山下碧仁さん(1年)

学校にダンゴムシは何匹いるのだろう? ということに注目した神奈川県立津久井高校の自然科学部。
転石下などの暗く湿った場所に生息するオカダンゴムシは日本全国に分布する。津久井高校の敷地内にも、生徒玄関や畑、中庭などによく見られる。特に武道場には多くの転石があるのでオカダンゴムシは特に良く見つかる。
落ち葉や動物の死骸をエサとして食べるが、殻のカルシウムを得るためにコンクリートも食べるとされている。ダンゴムシの個体が多いということは、もしかすると武道場の強度にも影響するのではないか? と興味を持ったのが研究のきっかけ。

実際にどれだけの数が生息しているのか、その規模を調べることにした。
捕まえた個体に着色して目印を付ける標識再補法により、個体数の推定を行った。
個体数を推計するためペテルセン法を用いて計算したが、数日の間に1000個体も変動する値となり、考えづらい結果だと思われるためジョリーセイバー法を用い、再度推定した。
5月末から6月中旬にかけて数値は増加し、それ以降は激減する結果となった。
季節変化がオカダンゴムシの行動や生態に与える影響について調べることで、さらに明らかになることがありそうだ。

研究タイトル「油脂の酸化が石鹸の加工特性に与える影響」

横須賀学院高等学校 理科学部
小川誠さん(2年)

1年生のときから理科学部では石鹸づくりを自身の研究テーマにしていた小川さん。理科学部の活動では実験室で白衣を着て「理系」として実験をしているが、その取組みの中にははっきりと「理系」「文系」と分類しにくい課題があると気付きつつあったそうです。
石鹸そのものは生分解性が高く、もともと環境に優しい洗剤なのですが、生産量は減少傾向にあります。しかし、環境に優しいという触れ込みで、廃油などを利用して石鹸をつくるワークショップは、近年SDGsにかなった取組みとしても盛んに行われている。しかしそれは本質としてSDGsの理念に合致しているのだろうか? 環境問題への対策は「あちらを立てればこちらが立たず」のような面があるのではないかと小川さんは考えます。

さて、リサイクル石鹸の材料になる廃油の回収元は食品関係が多く、調理用の揚げ油を原料にすることが多い。揚げ油は酸化すると健康に悪い成分が増えると言われているが、では具体的にどのような違いが現れるのかを確認しようと考えたのが今回の実験の主旨。
劣化度の違う食用油で廃油石鹸を作り、その収量・色調・水溶液のpH・硬さ・使用感(泡立ち)にどのように違いが出てくるか、劣化度による影響を検討しました。
発表を聴講した大学の先生からは、薬学の実験においてはどの成分が影響しているのかを調べるので、さらに深みの有る研究ができるようになるとアドバイスを受けていました。

横浜薬科大学は今年9月に日本薬学会関東支部大会の会場となり、同時開催で高校生対象のハマヤクサイエンス研究会の第1回学術大会も予定されています。
科学研究に興味のある方、自然科学系の学部に進学志望の方はこうした発表会を経験することでプレゼン能力を高めるトレーニングになりますし、同じ志を持つ仲間との出会いとの交流がモチベーションにもなります。
様々な大学や研究機関でも高校生対象の催しが開かれていますので、まずは足を運んでみることをおすすめします。

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