コラム
2022.05.24
人類と感染症との関わりの歴史を学び、探究学習のテーマに ~鵠沼高等学校
科学的論理的思考力の育成を実践している鵠沼高等学校(神奈川県藤沢市)の理数コースは、2022年度の探究学習の取組みとして「私たちの科学的知見、技術は、医療現場でどのように生かされているか」をテーマに設定。その上で「ヒトは感染症とどのように付き合ってきたのか」を探究課題として生徒各自が学習を行います。
4月下旬、理数コースの1年生約50名は横浜薬科大学(横浜市戸塚区)を訪問し、探究テーマへの理解を深めるため、遺伝子研究の専門家である川嶋剛教授(薬学部薬科学科長)の特別講義を受けました。
講義では人類が過去の歴史の中でさまざまな感染症の大流行を経験してきたこと、その中でどのように細菌、ウイルス研究が発展してきたかが解説されました。
講義の主な内容
- 感染症の流行は規模に応じてエンデミック・エピデミック・パンデミックに分類される
- そして現在が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)であること
- パンデミックにも6つのフェーズがある
- ワクチンの効果で体内に抗体が作られ、感染者・死者数が減少する
- しかし次々と出現するウイルスの変異株によって感染症との戦いは延々と続くこと
- 人類は歴史上、過去にも様々な感染症によるパンデミックを経験してきた
- 中南米のマヤ、アステカ、インカ文明の滅亡はスペイン人がもたらした感染症も要因となった
- 感染を防ぐための方法としての隔離、防護服、マスクについて
- ネズミを介して感染が広がったペストと、その対策
- 1894年、世界的にペスト流行した際、日本の北里柴三郎がペスト菌を発見、日本国内での感染拡大を食い止めた
- 1931年のブタインフルエンザ(A型)の発見からウイルス研究の進展
- 世界初のバイオテロは天然痘ウイルスが使われた
- 人間のDNAの大部分は「ウイルス」と同じ構造
- ヒトの持つ遺伝情報(ゲノム)のうち50%がウイルス由来の配列
…
まさに今、新型コロナウイルス感染症の脅威が続く中だけに、この講義は生徒たちの関心もとても高かったようです。講義後にも川嶋先生に多くの質問が投げかけられました。
生徒たちから様々な質問が寄せられました
- 変異をすることでコロナウイルスは自滅しないのか?
- インフルエンザと同じ扱いになるのはいつ?
- 過去の感染症の歴史から学ぶものある?
- 過去のペストの流行の原因が気になる
- 一度収まった新型コロナα株がオミクロン株に変わって再流行することは有り得る?
- 天然痘のように新型コロナウイルスを撲滅することはできる?
- SARSやインフルエンザ、新型コロナなどウイルスの種類によって潜伏期間が違うのはなぜ
- ウイルスのRNAは二重らせん構造をしていないのに、なぜ人間のDNAの中に入ることができるのか
- 新型コロナウイルス感染の後遺症が残るのはなぜ?
こうした疑問を持つこと、知りたいと思ったことが探究課題を定めるきっかけになります。今回の講義とその後の活発な質問や川嶋教授からの回答も含めて、生徒各自にとっては課題に取り組む参考になったようです。
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