2022.06.21

パンパスグラス、発光細菌、ヤマモモ … 横須賀学院高校と横浜薬科大学 オープンラボで共同研究プロジェクト開始

横須賀学院高等学校(神奈川県横須賀市)と横浜薬科大学(横浜市戸塚区)は今年、連携して理化学の共同研究プロジェクトを行っていく。

5月末に横浜薬科大学の川嶋剛教授が横須賀学院高校にて出張講義を実施。「ゲノムから分かること、分からないこと ― やさしくわかる分子生物学の基礎 ―」と題し、あらゆる生命現象について分子を使って理解することを目的とする学問「分子生物学」の魅力を語った。

DNAが保持する遺伝子情報とはATGCの並ぶ順番(塩基配列)のことで、遺伝子部分では、その配列がタンパク質のアミノ酸配列を決めていること。遺伝子を調べることによって生物の形や色などの目に見えるもの形質、目に見えない組織の情報が分かるということ。この遺伝子情報を解読することからゲノム医療が発展してきたこと、遺伝子の異常による疾患の原因解明と、その結果に基づく診断・治療法の開発に繋がっていることを説明。
がんを引き起こす原因となる遺伝子異常、現在までに100以上が解明されている発がん遺伝子と、それに対するがん抑制遺伝子の働きについて解説。こうした研究の成果による医薬品開発が現代医療の発展を支えていることを伝えた。

今回の出張講義は両校による「オープンラボ」立上げの一環として行われたもので、今年、3つのテーマを設定して共同研究プロジェクトを進めていく。

《研究1》シロガネヨシの吸収する土壌中の成分―ケイ酸ポンプ遺伝子の機能と進化―

シロガネヨシ(英語名:パンパスグラス)はススキに似た形状で、高く成長するので「お化けススキ」とも呼ばれるイネ科の植物。
原産地はブラジル、アルゼンチン、チリなど南米大陸で明治時代に日本に入ってきた。
稲やススキと比較して葉が硬いが、その理由は土壌中にある元素シリコン(Si:ケイ酸)を多く吸い上げるので含有量が多いのではないか?という仮説を立てたことが研究のきっかけ。シリコントランスポーターの働きを調べてイネと比較することで、ケイ酸の取り込み量の違いを調べる。植物の成長に有益な成分であるSiの蓄積をしらべることで、塩害や干ばつ、土壌改良、毒性金属への耐性など、植物防御メカニズムを導き出すことができるのではないか?

《研究2》海洋発光細菌の発光メカニズムの解明

イカや魚など海洋には発光する生物が存在している。生物の体表に存在する細菌が発光反応を起こしているのだと考えられるが、そのメカニズムは詳しく解明されていない。発光細菌の培養状況、栄養状態、細胞密度などの環境から、発光の強弱を解明する実験を行っていく。
実はこの研究は横須賀学院の理科学部で8年前から継続されているもので、さらなる解明が期待される。

《研究3》ヤマモモを使った健康機能食品の開発

ヤマモモは、甘酸っぱく食用としても美味な赤い実が成るヤマモモ科の植物で、日本国内各地で栽培されたり自生していたりする。
古来、中国では樹皮を基原とする楊梅皮(ヨウバイヒ)は去痰や止瀉などの効能がある生薬として用いられ、日本では外用薬として打撲や捻挫に用いられていた。
果実はクエン酸やブドウ糖, また赤い色素成分としてアントシアニンなどのポリフェノールを多く含む。両校の共同研究では、この健康機能を活かした製品開発に取り組んでいく。

これらの研究を、専門的な実験機器や設備を持つ横浜薬科大学の研究施設で「オープンラボ」として利用することにより、より精度の高い結果が得られることが期待される。新たな発見を心待ちにしたい。

この記事をシェア!

▲