2023.06.30

【レポート】最先端ラボではたらく研究者の日常に迫る!
研究者トークショー@湘南アイパークフェスタ

神奈川県藤沢市にある、製薬企業やライフサイエンス分野の研究開発機関が入居する施設「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」が今年で5周年迎えました。これを記念し、5月27日に一般の方にも施設を開放して、市民にもサイエンスを身近に感じてもらうイベント「湘南アイパークフェスタ」が開催されました。

イベントでは施設内の製薬企業などによる展示や、子ども向けの実験体験コーナーが設けられ、関心を集めていました。またステージでは、サイエンス系YouTuberとして人気の市岡元気さんやエンターティナー“科学のお姉さん”こと五十嵐美樹さんによるライブショーも行なわれました。


五十嵐美樹さんの圧巻のダンスと笑いにあふれたトーク。サイエンスショーでありながら練り込まれたネタの応酬に会場は大盛上がり。
ちなみに筆者は初見でしたが、正直めちゃめちゃ面白かったです。

詳細は割愛しますが、皆さんぜひ「ミキラボ・キッズ」をご覧ください。
https://www.youtube.com/@MIKI-LAB
そんな五十嵐さんが司会進行を務めるトークショーも行われました。
湘南アイパーク内の製薬企業で研究開発に携わる5人の研究者が登壇し、参加者からの質問に答える形で進行しました。


トークショー登壇者紹介(写真・右から順に)

“合成”のトモさん

心臓病に関わる治療薬の成分となる化合物を毎日探索している。新しいものを生み出す仕事をしている。合成とは「ゲームの世界でいうと錬金術師のようなもの」で、「しょこたん的に言うと錬金術師レベル31」とのこと。

“薬理”のサイキさん

大学教員。再生医療の分野でiPS細胞を使って人工の臓器を作り、病気や薬の研究をしている。将来的には病気になったときに取り替えられる臓器を作る「SFチックな研究」をしている。

“安全性”のハシキヨさん

製薬企業の研究所で安全性確認の仕事をしている。開発した薬をヒトが飲むことで副作用が出ないか、ヒトの試験の前に動物などに飲んでもらって確かめる趣味はランニング。今回も白衣の下にランニングウェアを着て登場!

“合成”のヨシカワさん

医薬品の開発をしている。薬の標的は「鍵穴」、薬は「鍵」。鍵と鍵穴がぴったり合う化合物をデザインしている。趣味は神輿をかつぐこと。「歌ってかつげる研究者」を目指している。今回も白衣の下に法被を着て登場!

“薬理”のクミチョウさん

安全性 普段は皮膚の薬を患者さんに使う前に安全かどうかを調べる仕事をしている。
前の会社で社長と喧嘩してから「クミチョウ」と呼ばれるようになった。(組長?でも優しそう)

五十嵐美樹さん(司会進行)

五十嵐さんも以前、創薬ベンチャー企業に所属していたときに湘南アイパークとも仕事で関わっていたことがあったそうです。

こんな感じで、皆さん半分ニックネームで登場。
約一時間、会場を訪れた一般の参加者からの質問に答えていきます。

Q. 何で研究者になったの?

トモさん
「小さい頃から新しいものを作るのが好きでした。大学では有機化学を専攻して、この仕事を選びました」

Q.薬の機能性について、どういう時にひらめいたりしますか?

トモさん
「まず病気で苦しんでいるヒトのことを考え、どんな病気になるのかを知ることが大切。そこから自分がどうアプローチできるかを考えて化合物をつくります」

ヨシカワさん
「世の中には色々な情報が溢れていて、直接役に立つ情報で無くても常にアンテナを張ることで勉強することである瞬間に、こういうときに使えるアイデアにtながるひらめきの瞬間になるので、普段からいろいろなことに興味をもって広く学ぶことが大切です」

ハシキヨさん
「このアイパークには100を超える企業が入っていて、様々な研究開発をしています。色々な人と一緒にご飯を食べて話して交流をすることで、自分に興味が無かったことでも、ヒントになったり、インスピレーションが湧くきっかけになります」

Q iPS細胞はいつごろ使えるようになる?

サイキさん
「ケガをして皮膚をすりむいて血が出たときに、即席のiPS細胞のシートを貼るようなものが使えるようになるまで、まだ時間はかかりますが、近い将来にできると信じて研究しています」

Q.アイパークの良いところは?

ハシキヨさん
「医薬品研究のほかにもキリンビールなどの会社もあるので、機能性食品を研究している人など自分の専門以外の人と話せるきっかけができること」

トモさん
「施設内のテニスコートで知り合った人とコラボするなど、サークルで知り合った人との仕事に繋がることもあります」


Q.AIは使いますか?

ハシキヨさん
「AIは色々な使い方をしています。たとえば顕微鏡で観察するときに人ではなく、AIで自動的に判別することもできます」

サイキさん
「今話題のChatGTPは学者の中でも使い方について議論がされていますが、私は毎日のように使っています。AIに質問を投げることで、人間では思いつかないようなことを返してくるので、知識を吸い上げることができます。機械に頼るのではなく、機械と対話する時代になってきているので、皆さんも使ってみてください」

Q.一日にどのくらい研究しているのですか?

ハシキヨさん
「研究者にも色々なタイプがいて、私の場合は実験はあまりしていなくて、海外の研究者と話をすることが主です。朝から夕方まで働いて、ランニングして、ご飯食べて、そのあと夜8時くらいからアメリカの研究者とオンラインで会議をしたりしています」

クミチョウさん
「徹夜で実験することもあります」

ヨシカワさん
「大袈裟に言うと24時間研究しています。実験することだけが研究ではなくて、風呂に入りながら頭の中で考えていること、寝ているときに夢の中で研究していたりすることもあります。それくらい皆好きで研究をしています」

他にも数多くの質問が寄せられ、トークショーは大盛況の中で終了しました。
研究成果につながるためのアイデアを生むためには好奇心を常に持つこと、色々な人との交流が重要なのだということがメッセージとして残されたように思います。

(そのほか、湘南アイパークフェスタの様子を写真でご紹介します)


明るくて外の緑が気持ちいいエントランスホール


市岡元気さん


薬の標的は「鍵穴」、薬は「鍵」。薬(鍵)と薬の標的(鍵穴)をぴったり合わせることを表した模型


様々な企業展示も


期間中、メタバース空間で接続できる催しも


ラボの間取りはこんな感じです。こんな職場で働きたい!

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