2024.08.01

【レポート】湘南アイパークフェスタ2024
最先端研究施設の“学園祭”今年も!

7月20日、神奈川県藤沢市にあるイノベーション開発拠点、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)にて「年に一度の“学園祭”」と銘打って施設を一般開放するイベント「湘南アイパークフェスタ2024」が開催されました。
普段は入ることのできない最先端の研究所に入れる貴重な機会でもあり、来場者も3300名を超えて大盛況。
施設に入居する製薬会社や食品メーカーなどの企業や大学による展示やワークショップ、サイエンスショーなどが繰り広げられ、参加者にとっても好奇心を刺激される経験になったと思います。
今回はこのイベントをレポートしてみたいと思います。



一般開放イベントが行なわれるのは昨年に続き2回目。サイエンス学びラボ編集部も前回お邪魔していました。

湘南アイパークの研究者の皆さんによるトークショー

前回もとても面白かったのがアイパークに入居する企業、大学の研究者によるトークショー。
今回は6名の研究者がステージ会場からの質問に答え、サイエンス研究の仕事についてお話しを聞かせてくれました。


トークショー出演の皆さん自己紹介(写真右から ニックネームと所属)

ともさん(Cardurion Pharmaceuticals)

心臓病の治療薬の研究をしている。有機合成の観点で実験して新しいものを見つけるという、ゲームの世界に例えると錬金術師みたいに新しいものを作っていく仕事。しょこたん的にいうと今年でレベル32になった。仕事が終わったらすぐにテニスをする生活。

わかさん(キリンホールディングス)

キリンというと、お酒や清涼飲料のイメージが強いが、同社はヘルスサイエンス分野も強く、新しい機能性を持った食品の開発、研究を行なっている。趣味は音楽を聴いたり、スポーツしたり鑑賞するのが好き。入社2年目で、このトークショーメンバーでは最年少。

ノリさん(東京医科歯科大学)

iPS細胞から立体的な臓器を作る再生医療の研究をしている。研究が趣味みたいだと家族からも言われてしまってるが、ギターで作曲をしたり、テニスしたりと、仕事以外にも色々なことをしている。前髪の金髪が素敵。

リサさん(武田薬品工業)

学生の頃はノリさんと同じくiPS細胞研究所で山中伸弥先生のもとで学び、今もiPS細胞を使ってアルツハイマー病を治すための研究をしている。趣味はトレイルラン。山道を160キロ走ったりしている。「ゴールを目指すことが、研究と似た感覚がある」。

くみちょーさん(マルホ)

皮膚に関して、アトピー症状などでの神経伝達からかゆみのメカニズムなどの研究をしている。
5歳の時にお風呂で石鹸から泡が出る現象に興味を持ったときから、将来は実験をする人になろうと決意していた。アニメが大好きで、毎期全作品の第1話をチェックして見極めを行なう。

むーさん(あすか製薬)

CMCという、薬のもとを錠剤にする研究をしている。小さな錠剤のスケールから大きなスケールの生産まで、実際に薬を使えるようにする部門の仕事。最近はまっていることは庭の木を切ること。なんと3階建てくらいの高さの木に登って枝切りができるそう!

皆さん、研究所の仕事とともに趣味や好きなことも楽しみ、充実した毎日を送っていることが伝わってきます。色々な質問に回答されていたのですが、「研究者になって良かったこと」を紹介します。

Q. 研究者になって嬉しかったことは

むーさん
研究者としてやっていく中で嬉しかったことは、自分が手掛けた錠剤が PTPシート包装に入っているのを見た瞬間です。市場に出る可能性のある薬なのだという体験があり、それが皆さんの健康とかに繋がっているのが素晴らしいことだなって思っています。


くみちょーさん
何百万通りもの化合物を評価する中から、1個すごい活性があるものを見つけた時の喜びが格別でした。


リサさん
研究分野で仕事をしていると国の壁が無いこと。世界どこの国に行っても、基本的にみんな同じように研究をしているので、議論してどうやったら前に進めるかということを考えたりして、壁のない世界を感じられるのが、研究者になって一番良かったことだと思います。


ノリさん
リサさんと同じで、世界中に研究をする友だちができること。研究という言語で会話ができるので、すごく会話弾む。英語はめちゃくちゃ得意ではなかったけど、会話していくうちにどんどん仲良くなって輪が広がるので、国境とか、なんかアホらしく感じるくらい、世界がどんどん広がっていく感覚があります。あと、大学の人なので、世界で初めて発見された情報を毎日見られるのは幸せなことだなと思ってます。


わかさん
もともと物を作るのが好きでしたが、新しい研究テーマを考えている時に、これまで世の中にない機能性だったり、新しい機能を持った食品について調べてみて、実現でき可能かどうか検証しているときが1番ワクワクして楽しいです。


ともさん
皆さんがおっしゃるように、世界中の人たちとお話しができて、海外に行って、そこでお友達を作ってネットワークを作れること。そしてやっぱり自分の携わった化合物で患者さんの病気が治りそうだということが分かるときが嬉しいし、ゾクゾクする瞬間です。

研究を深めて成果を出すためにも好奇心を常に持つこと、色々な人とのコミュニケーションが重要なのだということが伝わってきたトークショーでした。

ハカセ女子と一緒に科学を学ぼう! 横浜国立大学×CurioSeeds

施設を横断する広い通路スペース「ブロードウェイ」では、アイパークに拠点を置く24の企業や大学による展示や体験コーナーが行なわれました。
その中で理系の大学生・大学院生によるサイエンスコミュニティ「CurioSeeds」は、主に小中学生を対象にしたオリジナル香水作りワークショップを実施していました。




「決められた量の材料を混ぜたはずなのに違った香りができるのはなぜなのだろう、とか、実験の体験を通して探究心を持つきっかけになってもらえれば」と語るのは、リーダーの飯島瑞稀さん(同大学院理工学府博士課程2年)。
CurioSeedsの主な活動は小中学生にむけた科学の出張授業や、高校生へのキャリア教育など。
8人のコアメンバーは博士課程の大学院生で、そのうち6人が女子だといいます。
理系に進学したり研究者を目指す女子が少ない現状を変えていきたいという思いで、活動しているそうです。

CurioSeeds代表の飯島瑞稀さん

好奇心をかき立てられる最先端企業のイベント盛りだくさん

もともと湘南アイパークとは武田薬品工場の自社研究所だったところを外部に開放して、2018年に新たなオープンイノベーション施設として開設されたもの。
武田薬品工業のブースでは分子模型を作ったり、分子設計体験を通して製薬会社の研究をシュミレーションできるコーナーで子どもたちの人気を集めていました。

また同社が京都に所有する薬用植物園も紹介され、天然生薬の材料を使ったオリジナル七味唐辛子を作れるコーナーもまた行列ができる人気でした。

動物用医薬品の提供からペットの健康ケア、畜水産動物の予防・衛生などを手掛ける共立製薬では、農場で搾りたての牛乳に行われている品質検査の体験を実施。私たちがいつも安全で美味しい牛乳が飲める背景を学びます。

キリンホールディングスは「飲み物の世界を体験してみよう!」と題して、実験教室や五感を使った体験を通して、皆大好きなキリンの飲み物や、ヘルスサイエンス研究から生まれた「プラズマ乳酸菌飲料」の魅力を紹介していました。

世界の人口増による食肉の需要増と、畜産業がしめる温室効果ガス排出量の多さは地球環境に負荷をかけることから、これから食肉の確保が難しくなることが予想されています。新たなタンパク質獲得の課題解決を目指して「培養肉」の開発を手掛けるオルガノイドファームの展示にも注目が集まっていました。

湘南アイパークのある村岡地区に2021年に発足したイノベーションゲートウェイ湘南ロータリークラブは、地域社会と新しい技術を結び付ける活動も行なっています。地域発の新たなお土産品として、免疫学の専門家である辻典子教授(十文字学園女子大学食品開発学科)が携わって乳酸菌サブレを開発しています。

講堂では、マインクラフトのプロ、タツナミシュウイチさんによる「マイクラの世界で遊んでみようタツナミ先生の科学実験・プログラミング教室」や、お笑いコンビ・ボルトボルズによる科学実験に笑いを盛り込んだサイエンスショーのステージで大盛り上がりとなりました。

湘南アイパークのマスコット「湘南ナミーちゃん」を始め、入居企業に縁のあるゆるキャラたちも来場者の目を和ませてくれました。


湘南アイパークの「湘南ナミーちゃん」。ブルーの湘南イメージでかわいい!


ハグハグの森からやってきた「たなみん」(田辺三菱製薬)もフォトスポットで皆を待っていた!


あすか製薬の「あすかちゃん」もフォトスポットだけでなく会場を練り歩いてごあいさつ

まだまだ他にも面白い企画展示があって全部紹介しきれないのですが、全部見て回ると1日では足りないくらいの充実したイベントでした。
今後も「サイエンス学びラボ」では今後も、湘南アイパークの方々のお話を深掘りしていきたいと考えています。お楽しみに!


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