2025.09.22

ハマヤクサイエンス研究会第4回学術発表会開催レポート【医療・健康系】

「医療・健康」分野では10題の発表がありました。

研究タイトル「障害を持った犬をもっと幸せにする歩行器を考案する」優秀賞

トキワ松学園高等学校
梅津依里さん

障害を持つ犬の負担を軽減し、自然な見た目で快適に歩ける歩行器の開発を目指しました。犬用の義足について55人からアンケートをとり、「見た目が機械的」といった課題が明らかに、専門企業からも飼い主や犬への負担が指摘されました。そこで3Dプリンターを用い、軽量・低コストで短時間に作製できる義足を試作しました。今後は犬の体格差や心理面への配慮も加えて制作をすすめ、多くの犬と飼い主が安心して暮らせる社会を目指します。

優秀賞おめでとうございます
障害を持つ犬の歩行を助ける歩行器を、3Dプリンターを活用して軽量・低コストで試作された本研究。55人へのアンケートや専門企業への聞き取りなど、多角的に課題を分析し改良を重ねる姿勢がとても印象的でした。動物と人とのより良い共生に向けた素晴らしい探究でした。おめでとうございます!(編集部より)

AM-A1

研究タイトル「異所性インスリン分泌細胞誘導による1型糖尿病根治の可能性」

横浜学園高等学校
佐藤優真さん

1型糖尿病は自己免疫で膵β細胞が破壊される難治性疾患です。本研究では、免疫寛容環境を有する臓器である肝臓や腸管における異所性インスリン分泌細胞の誘導についての文献調査を行いました。転写因子PDX1・NKX6.1・MafaをAAVベクターで導入することで腸管や肝臓で免疫攻撃を回避しつつ膵β細胞様機能を持つ細胞獲得が期待されましたが、腫瘍化やパラクリン制御の欠如が課題であり、安全性や長期効果を評価するin vivo研究の必要性が示されました。

AM-A2

研究タイトル「血圧の測定方法について」

横浜清風高等学校
竹内優雪さん

発表者自身の大腸ポリープ治療をきっかけとし、本研究では血圧測定方法の精度を検討しました。オムロン製上腕式とシチズン製手首式を比較したところ、上腕式は安定した値を示し、手首式は低めに測定されました。また、仰向け姿勢や数値を見ながらの測定では血圧が下がる傾向があり、心理的影響が確認されました。結果として、椅子に座り上腕で数値を見ずに測定する方法が最も測定値が安定している結果となりました。

AM-A3

研究タイトル「副作用とオーバードーズを減らす個別化医療とAI活用の可能性」

関東学院六浦中学校・高等学校
福島拓弥さん

医薬品の進歩で治療選択肢は増えましたが、副作用やオーバードーズは大きな課題です。本研究では文献調査と横浜薬科大学教授らへのインタビューを行い、剤形やドラッグデリバリーシステムによる副作用軽減の工夫や薬理学的課題を整理しました。さらにAIによる創薬設計や患者データ解析が有効であることを確認しました。将来的にはAIと個別化医療の融合により、副作用を最小化した安全な薬剤開発と提供が期待されるとともに、教育的支援・社会的ケア・服薬管理の体制が不可欠であるとも考えられます。

AM-A4

研究タイトル「どうすれば生理痛の改善策や緩和策を見つけることができるのか」

成女高等学校
久保梨乃さん

薬の副作用への不安から、生理痛を服薬以外で緩和する方法を探ることを目的に研究を行いました。発表者自身の基礎体温と体調を2か月間記録したところ、生理開始・終了時には体温が必ず低下し、生理2日前から腹痛や吐き気が強まる傾向が見られました。心理状態には規則性は確認されませんでした。今後は「生理が重い月と軽い月の違い」や「緩和につながる生活習慣」を小課題として継続的に調査し、運動習慣や環境要因を含めて改善策を探ります。

AM-A5

研究タイトル「昆虫食の実践報告」

二松学舎大学附属高等学校
後藤洸太郎さん

将来の食料難への解決策として、持続可能なタンパク源である昆虫食を実践的に調査しました。セミやバッタを素揚げして比較した結果、香ばしくサクサクとした食感や甲殻類に似た風味があり、美味しさは評価できましたが、食品とは言い難い見た目や外骨格が口に残る点が課題でした。食材として普及させるには、調理法の工夫や加工食品化による改良が必要と考えられます。昆虫食は高栄養で量産も容易なことから、今後の食糧問題解決に有効な選択肢となり得ます。

AM-B3

研究タイトル「茶葉から作る赤色着色料の実用性の検討」

トキワ松学園高等学校
岡田桃子さん

本研究では、食品廃棄物となる茶葉を活用した赤色着色料を作り、実用できるかを検討しました。乾燥茶葉と未乾燥茶葉を加熱抽出し、レモン汁を加えて色を比較したほか、冷水抽出も試みました。しかしいずれも白っぽく変化し、赤色にはなりませんでした。茶葉に含まれるテオフラビンの酸性の水中では無色化する性質が原因と考えられます。今回は実用化に至りませんでしたが、廃棄茶葉の新たな活用法を探る第一歩となりました。

AM-B4

研究タイトル「自作したローズマリー化粧水の効果について」優秀賞

横浜清風高等学校
山口眞央さん、府川優李さん、矢部望音歌さん

本研究は、自作したローズマリー化粧水とヒキオコシ化粧水の保湿効果を数値で検証することを目的としました。各化粧水を調製し、各条件における肌の水分量をBIA法で測定しました。その結果、グリセリンのみの化粧水に比べローズマリー化粧水の方が優れた保湿効果を示し、ヒキオコシ化粧水はローズマリー化粧水ほどの効果は見られませんでした。ローズマリーに含まれるロスマリン酸やウルソール酸などが効果に寄与していると考えられ、今後は成分分析や細胞実験を行い、有効性を明らかにする予定です。

優秀賞おめでとうございます
自作したローズマリー化粧水の保湿効果をBIA法で数値化し、科学的に検証した点がとても素晴らしかったです。グリセリンのみよりも高い保湿効果を示したことは、日常生活に身近な化粧水研究でありながら、成分分析や細胞実験といった今後の発展性も感じられました。今年は冬、春、夏と段階を経て成果を発表できましたね。おめでとうございます!(編集部より)

PM-A6

研究タイトル「緑色をした夏野菜の苦みについて(キューリ・ゴーヤ・ピーマン)」

横浜清風高等学校
小林愛実さん、髙橋穂華さん

本研究は、発表者の家族がキュウリを過剰に摂取したことによる腹痛をきっかけに、夏野菜の苦み成分を調べ、これらの緑の野菜を味覚官能試験で識別可能かを検証しました。キュウリに含まれるククルビタシン、ゴーヤのモモルデシン、ピーマンのクエルシトリンやピラジンが味に影響すると考えられており、官能試験ではゴーヤの苦味が最も強く、次にピーマン、キュウリの順でした。参加者全員が3種を識別でき、苦味を手がかりに食事量の調節が可能であることが示唆されました。

PM-A7

研究タイトル「ほめにゃんで心を健康に」特別賞

トキワ松学園高等学校
棚橋ひなたさん、原田玲衣さん

本研究では、自己肯定感向上を目的に、褒めてくれる育成ゲームアプリ「ほめにゃん」を開発しました。Scratchで試作後、Pythonやren’pyを用いて改良を行い、文化祭で来場者に体験してもらいアンケートを実施しました。今後はweb版を公開し、誰でも利用できる形に発展させる予定です。学校で日々の目標や達成を入力し褒められる仕組みを導入することで、達成感と自己肯定感を高め、学生の心の健康促進につながると考えられます。

特別賞おめでとうございます
自己肯定感を高める育成アプリ「ほめにゃん」を試行錯誤の末に形にし、ScratchからPythonやren’pyへと改良を重ね、リリースまで実現した点が本当に素晴らしかったです。多くの人に体験してもらいながらアップデートを続ける姿勢にも感銘を受けました。心の健康を支える優しい発想と行動力に、大きな拍手を送ります。おめでとうございます!(編集部より)

PM-A9

◆ハマヤクサイエンス研究会 第4回学術発表会 ほかの研究分野の発表を見る

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