2022.07.26

食品の基礎研究で培った知識を生かして、
さらに色々な商品開発のスキルを身につけたい

【第9回】

アサヒグループ食品株式会社 
井上 咲希さんInoue Saki

ベビーフードの商品開発をしている井上さんにお話を伺いました。

現在の仕事を選んだきっかけを教えてください。

小さい頃から料理をすることが好きで、大学では食品に特化した学科に入学し、基礎研究に携わっていました。大学時代は料理教室にも通っていました。
その後、大学院に進学しましたが、研究結果が社会にどのように還元されるのか、ということが当時イメージできず、基礎研究で培ったスキルが生かせる商品開発に携わりたいと思うようになり、食品メーカーに就職することを決めたのです。

どんな商品を開発していますか。

和光堂ブランドのベビーフードを開発しています。主にレトルトタイプや粉末タイプの離乳食で、具体的にはお湯を注いで混ぜるだけで簡単に離乳食が作れる「手作り応援」、調理済みの食材に混ぜたりかけるだけの「そのままソース」、具材を赤ちゃんのかむ力に合わせて6段階の大きさ・固さに設定した「グーグーキッチン」など、合計で6つの商品の開発に携わっています。
2年目の夏には初めて開発主担当として「そのままソース」の立ち上げに携わりました。マーケティング部(マーケ)が企画した商品コンセプトをもとに試作品制作を繰り返し、レシピを決めていきます。

「和風は肉じゃがのような味に」、「中華は八宝菜のような味に」というようにマーケと味のイメージをすり合わせます。タンパク源を入れたい、野菜を3種類以上入れるといった具材のオーダーもあり、栄養バランスや具材の大きさ・硬さ、原材料のコストなどを考慮してコンセプトを具現化していきます。
レシピ開発と並行して工場での生産についても検討します。「そのままソース」は初めて立ち上げたシリーズで、これまでの商品とは異なったレトルトパウチを使うことが決まっていており、新たに生産工場を探す必要がありました。

レトルトパウチの形状が違うだけで工場を探すのですね。

これまで発売していた商品は、具材とソースをレトルトパウチに充てんするノズルが1本だったのですが、「そのままソース」ではノズルが2本必要だったため、その機械を設備した工場でなければいけなかったのです。
おまけにベビーフードは、衛生面やアレルゲンの選別、異物混入対策といったようにメーカーから工場への要望が厳しいため、受け入れてくれる工場が少なく、探すのに苦労しました。さらに、原材料を保管している倉庫と生産工場が遠くならないように場所も考慮しなければいけません。配送コストが販売価格に反映されるからです。そのほかにもさまざまな要素について、原材料部や生産部と協議しながら、総合的に判断して委託工場を決めていきます。生産工程での課題やリスクなども事前に解決しなければいけません。

レシピが出来たら生産テストや保存試験をして、初回生産を迎えます。その間にパッケージに記載する原材料表示や栄養成分表示も作成します。

商品開発といってもさまざまな仕事があるのですね。

ベビーフードは、お客様からの問い合わせ件数が群を抜いて多く、お客様の目はシビアです。安心安全な商品を提供することはもちろんですが、多くのお客様の手元に商品が届くよう手ごろな価格を実現することも重要になってきます。

どれくらいの期間で商品ができるのですか。

一般的に企画の立ち上げから商品が市場に出るまで8~9カ月、そのうちレシピ開発は2カ月くらいです。発売日や価格は事前に決まっているので、限られた時間でコンセプトに合ったものを開発することが求められます。

かなりタイトな日程で開発されているようですが、職場環境はいかがでしょうか。

レシピを考えたり、試作品をつくったりするのは1人ですが、先輩にアドバイスをいただきながら開発を進めています。丸投げで仕事を任せられるのではなく、しっかりしたサポートがある中で仕事ができるので、自身の成長につながっています。

今後やってみたいことはありますか?

弊社では、シニア向けやサプリメント、フリーズドライなど幅広い商材を取り扱っているので、いろいろな商品に携わり、食品開発のスキルを身につけたいと思います。

高校生に向けてメッセージをお願いします。

将来なりたいものがあると思いますが、一つのことに縛られるのではなく、いろいろなものに目を向け、興味を持ったことは積極的に挑戦してほしいですね。その経験がきっと将来役立つと思います。

井上 咲希(いのうえ・さき)

アサヒグループ食品株式会社 研究開発本部 商品開発三部 主任

九州大学農学部卒業後、同大学大学院生物資源環境科学府に進学。糖と脂質の関係から、生活習慣病(脂肪肝)の発症機序を探る基礎研究に従事する。2019年にアサヒグループ食品株式会社に入社し、ベビーフードの開発に携わる。趣味は料理と旅行。休日はパン作りにも挑戦している。

(取材実施:2022年6月)

アサヒグループ食品株式会社

日本初のベビーフード、乳幼児用ミルクを発売した和光堂ブランドの商品をはじめ、タブレット菓子の「ミンティア」、サプリメントの「ディアナチュラ」、フリーズドライ食品の「アマノフーズ」など、生活者の健康な食生活を支える多彩でお馴染みの商品を数多く手掛けるアサヒビールグループの総合食品メーカー。

アサヒグループ食品株式会社

和光堂ブランドサイト

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