2023.02.07

化粧品開発は論理的思考とともに感性も求められる仕事です

【第11回】

株式会社ファンケル 
今井蓉子さんImai Yoko

スキンケア商品の研究開発についてお話していただきました。

現在の仕事を選んだきっかけを教えてください。

高校生の頃から化粧品、特にスキンケア商品に興味を持っていました。化粧水や乳液のことについて友人と話しているときは楽しかったですし、子供の頃から同居していた祖母は潤った肌を自慢しながら、私に優しく語りかけてくれました。幅広い世代を夢中にさせる化粧品に魅力を感じ、その頃から私もみんなを幸せにすることができる化粧品開発の仕事に携わりたいと思いました。
大学では、化粧品会社に就職した先輩がいる研究室を選び、修士課程まで生体内の電子伝達系に関する研究をしていました。研究テーマは化粧品開発に直結するものではありませんでしたが、大学・大学院時代に培った研究手法は今でも役立っています。

現在、どんな商品を開発していますか

スキンケアの製品開発と技術開発を行っています。
製品開発は、化粧品商品企画部が企画した商品コンセプト案に沿って、私たちスキンケア開発グループの研究員が使用感と肌への効果が両立できるようにさまざまな原料を組み合わせ、化粧品商品企画部と評価をしながら、処方を完成させていきます。
処方が決まれば、小さなラボスケールで作ったものを、スケールアップした工場で作れるようにするため、工場の技術者と話し合いながら同じものが大量生産できるように検討していきます。
それから容器の選定もします。容器の材料と中身の組み合わせが悪いと分離することがあるため、容器との相性を見る容器試験も実施します。

商品開発をするうえで苦労することはありますか

限られた期限・予算で、求められる使用感と機能性を両立することです。
特に使用感は、数値化することが難しいため、手で触って使用感を評価する官能評価を行います。肌の感覚は一人ひとり異なります。「しっとり」「もっちり」といった使用感を化粧品商品企画部の担当者とすり合わせる作業は苦労します。

開発者にも感性が求められるのですね

スキンケア商品の決め手は機能性のほかに、肌への使用感も大きな要素を占めるため、論理的思考を持つことは言うまでもありませんが、開発者は感覚というか「感性」も必要になってきます。

技術開発ではどんなことをしているのですか

スキンケア開発グループで新しい技術の開発に取り組み、その新しい技術を導入した商品を化粧品商品企画部に提案します。
技術開発は3~5年くらいかかるため、商品化につながるまでには長い年月を要しますが、開発者としては商品化を目指したいところですね。
新しい技術開発のために、学会などに参加し、情報収集にも努めています。

女性の研究員が多いようですが、職場環境はいかがでしょうか

産休・育休を取得した研究員のほとんどが職場復帰をしています。私も産休・育休を取得して研究所に戻ってきた一人です。
開発には人生経験も反映されます。これまでの経験を生かして、スキンケア商品を通じてお客様に豊かな暮らしを提供していきたいと考えています。

最後に高校生へのメッセージをお願いします

その時は無駄だと思っていたことも、振り返るとやっていて良かったと思うことはたくさんあります。いろいろな経験をして、やりたいことがあったらあきらめずにチャレンジしてほしいですね。

今井 蓉子(いまい・ようこ)

株式会社ファンケル 化粧品研究所スキンケア開発グループ
2012年に神戸大学大学院理学研究科卒業。化粧品会社を経て、2016年に株式会社ファンケルに入社。化粧品研究所スキンケア開発グループで、化粧液・乳液・美容液・クリーム等スキンケア品全般を担当している。趣味は料理。最近は休日にお菓子作りをすることが楽しみ。

(取材実施:2022年12月)

株式会社ファンケル

神奈川県横浜市に本社を置く化粧品メーカー。1980年の創業当時から肌へのやさしさにこだわった無添加化粧品を中心に開発・製造・販売をしており、多くのユーザーからの支持を得ている。また青汁や発芽玄米をはじめ「カロリミット」や「えんきん」などロングセラーの健康商品も数多く発売している。

株式会社ファンケル

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