サイエンスの仕事の現場
2023.07.31
食品が多くの人の健康に役立てることに心惹かれました
【第12回】
株式会社ビーアンドエス・コーポレーション平田理紗さんRisa Hirata
サプリメントの商品開発と品質管理について仕事の様子を伺いました。
現在の仕事を選んだきっかけを教えてください。
小さい頃から体が弱かったので、健康に関わる仕事がしたいと思い、大学時代は、医薬品の治療効果を解明するための研究をしていました。
食品業界に足を踏み入れたのは、就職活動時に、健康の維持・増進に役立つ機能性表示食品(※)の開発をしている企業があることを知ったのがきっかけです。食品なら医薬品よりも幅広く人の健康をサポートできるのではないかと思ったからです。
※機能性表示食品とは…「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できるという食品の機能性を表示することができる食品のこと。事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性が商品パッケージに表示することができる。(消費者庁のホームページより)
仕事の内容を教えてください。
当社は、乳酸菌生成エキスやホタテ由来プラズマローゲンを使った機能性表示食品や、健康食品の製造・販売を通して、お客様の健康に寄与することを目指しています。私が在籍する八王子研究開発センターでは、乳酸菌生成エキスやホタテ由来プラズマローゲンの研究や製造、そして新商品の開発などを行っています。
私はその中で商品の品質管理と商品開発の支援をする業務に携わっています。品質管理は、すでに販売されている製品の定期的な検査をします。例えば、異物が混入していなかいかどうか、機能性成分量がパッケージに表示された値と一致しているかどうかなどの検査をしています。また、アスリートが安心して飲んでいただけるようにアンチ・ドーピング認証「インフォームドチョイス」を取得している製品については、世界アンチ・ドーピング機構の定める基準にのっとった管理を行っています。
日々の仕事ではどんなことをしていますか?
商品開発では、例えば、営業部門から「女性をターゲットにした常温保存可能なゼリーを開発してほしい」という提案があれば、品質面から実現できるかどうか分析します。加熱により成分に大きな変化が生じる原料を使う場合、ゼリーのような剤形が適さないことがあるからです。このように実現できない方向に商品開発が進まないように開発部門や営業部門と連携しています。また、商品のトレンドを知るために展示会に参加して、開発に役立つ情報を集めることもあります。
検査は細菌検査で5種類、成分検査で10種類くらいあり、同じ検査でも製品によって方法が少し異なります。たくさんの製品検査をするので、正確かつ効率よくすることが求められます。
仕事の魅力について教えてください。
基本的にラボで働いているので、お客様と直接お話をする機会はありませんが、日頃から社内でお客様の声を共有しています。好意的な意見をいただいたときは、モチベーションアップにつながりますね。安心して長くご愛用していただけるように、しっかりと検査していきたいと思います。
学生時代に学んでいて良かったことはありますか?
学生時代は、酵素の構造を調べるために、微生物を使って酵素の構造体を作っていましたので、微生物を取り扱う知識は役立っていますし、タンパク質の構造解析や精製技術は今の仕事に直結しています。
最後に高校生へのメッセージをお願いします。
高校生の皆さんは、自分が働いている姿を想像することは難しいかもしれません。実際、私自身もそうでした。まずは自分が好きなことや、興味があることを突き詰めていってもらいたいですね。一見関係がないようなことでも、そこで培った経験が次につながることがあります。
平田 理紗(ひらた・りさ)
株式会社ビーアンドエス・コーポレーション
品質管理チーム/(兼)製造開発支援室 シニアスタッフ
神奈川県出身。横浜市立大学国際総合科学部国際総合科学科理学系生命医科学コース、同大学大学院生命医科学研究科に進学。2019年に卒業後、株式会社ビーアンドエス・コーポレーションに新卒入社し、八王子研究開発センターで勤務している。
趣味は旅行。もう一度行きたいところは上高地。「最近子供の頃に習っていたピアノを再開して、楽しんでいます」。
(本人の希望により仮名で掲載いたしました)
(取材実施:2023年6月)
株式会社ビーアンドエス・コーポレーション
乳酸菌の研究で100年以上の実績を誇る、機能性食品のメーカー。「乳酸菌生成エキス」と認知機能改善成分である「ホタテ由来プラズマローゲン」を主力商品としている。同社製品は医療関係者からも高く評価されており、成分、素材については大学との共同研究で多くの論文も発表されている。
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