理系の進学
2022.10.25
“今”を大切に生き、自分の軸となる「初心」を持とう
【第5回】
三浦学苑高等学校進路指導グループ 進学指導係長 兼 進学コース主任 教諭 安宅隆先生
理系生徒の進学・就職について最近の傾向やアドバイスを伺うこのコーナー。
第5回目は世界でも有数の国際バカロレア認定校である三浦学苑高校(神奈川県横須賀市)で進路指導を担当する安宅隆(あたぎたかし)先生にお話をお聞きしました。
進路選びについて
本校は国際バカロレア(IB:International Baccalaureate) 認定校(*1)として、国際バカロレア機構が提供・認定する、国際的な教育プログラムを提供する普通科IBコースを含め、2科6コースあります。 「初心を創らせる進路指導」(*2)を進学スローガンとして掲げ、大学や専門学校の入試担当者から直接話を聞く「校内進路相談会」、大学がオンラインで実施する各専門分野・学問領域についてのガイダンスや模擬授業を行う「みうらぼ」、教員、保護者以外の社会で活躍する「第三の大人」(卒業生や社会人の方々)による講演会、進路アドバイザーによるサポートなどを通じて、10年後、20年後も自分の軸となる「こういうことのために生きていきたいという、社会の中での使命感」を考えるきっかけを与えています。
理系進路の傾向について
今年に関しては薬学や化学が多くなっている印象があります。新型コロナウイルス感染症の蔓延により、医療やサイエンスに触れる機会が多くなったことが大きな要因です。
昨年3年生のクラス担任を務めていたのですが、その頃から人気があるのが情報(プログラミング)です。在校生に対して、大学の情報科に進学した卒業生に講演をしてもらったのですが、プログラミングの知識を学ぶというのではなく、「プログラミングでどう世界を変えていきたいのか」ということを学んでいくのが大学だと訴えていました。彼女は高校では吹奏楽をやっていたので、音楽アプリを開発して社会を明るくしたいと目標を掲げていました。
プログラミングは単なる道具にすぎません。それを使って自分がどうなりたいのか、本校では初心と言っていますが、18歳の時に何かしら持っていてほしいですね。
本校では推薦入試に関しては、必ず事前に学内のエントリーを行い、「将来どうなりたいのか」「社会や地域にどのように貢献するのか」といったことを志望理由の中に書いてもらいます。
初心をつくるために必要なこと
まずは予定を立てて、自分の行動を管理することが必要です。たとえば手帳があれば、これまでの取り組みを振り返ることができますし、それをもとに「半年後あるいは1年後のなりたい自分」について考えるきっかけにもなります。本校の普通科進学コースでは「フォーサイト手帳」を活用しています。スケジュールを書き込むだけでなく、これまでの自分を振り返り、理想的な未来像を書き込んでもらい、期末ごとにその進捗状況を確認しています。
コロナの弊害
今年の3年生に限って言うと、コロナ禍のなかで入学式が6月だったり、最初の授業がオンラインだったりと、対人コミュニケーションが難しかった印象があります。大学の先生に対面で話を聞く機会があっても、主体性に欠ける部分が見受けられました。自分で問いやテーマを立てる力が身につくよう、われわれ教員もサポートしていきたいと思っています。
高校生へのメッセージ
今を生きてほしいですね。先のことばかりを考えるのではなく、この瞬間、10代だからこそできることはたくさんあります。たとえ失敗したとしても、子供の姿を見てサポートしてくれる大人もいます。どうしても自分の持っている知識や経験だけで行動しがちですが、自分の価値観にとらわれず、さまざまなことにチャレンジしてほしいですね。
*1 国際バカロレア(IB)について
国際バカロレア機構は、1968年にスイスのジュネーブに設立した非営利組織。厳しい基準をクリアした認定校は世界で5,500校ほどしかない。
IBは多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的に、年齢に応じたカリキュラムを提供している。2年間の履修と最終試験などで一定基準を達成すると大学受験資格となる国際バカロレア資格が授与される。
*2 初心
校訓である「初心忘るべからず」から由来
今回お話を伺ったのは
三浦学苑高等学校
進路指導グループ 進学指導係長 兼 進学コース主任 教諭 安宅隆先生
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