2024.12.24

高校生の視点から医療・看護の課題に切り込む CHANGE第3回シンポジウム開催


看護現場の革新を目的に掲げ、公益財団法人川崎市産業振興財団とナノ医療イノベーションセンター(iCONM)が中心となって医療・工学・看護の共創を推進するプロジェクト「CHANGE」が2022年のスタートから3年目を迎え、12月17日に川崎市内で第3回目のシンポジウムが開催されました。
今回のシンポジウムでは、様々な研究開発プロジェクトに関わる研究者や企業が参集し、研究成果や今後の方向性が報告されました。
シンポジウムの第1部ではCHANGEの課題の一つである老化抑制をテーマに、新しい医薬モダリティ研究の解説として研究者による「エクソソーム」や「mRNA」の研究報告やパネルディスカッションが行われました。

革新的な技術の受け手である未来世代の高校生からの意見を

増加していく患者数と反比例して医療者が減少しているアンバランスを工学の力で是正するために生まれてきたのが、プロジェクト「CHANGE」であり、様々な革新的な技術の研究開発が進められていますが、こうした革新的な技術が最終的に社会実装までたどり着いた時に、倫理的な側面からの検討が不可欠な場面も想定され、医療従事者だけでなく、患者や一般市民への丁寧な説明と理解促進が重要になってきます。
シンポジウムの第2部では、CHANGEプロジェクトが現実化する将来を見据えた際に、今の若い世代が社会の中心に存在していることから、未来の受け手である高校生を主役に据えたトークセッションが行われました。
川崎市内にある洗足高等学校、川崎市立川崎総合科学高等学校から4名の高校2年生が登壇し、モデレーターとしてWebメディア「8bit news」のサイエンス番組のキャスターで、スタディサプリなどで化学講師を務める坂田薫さんとiCONMのコミュニケーションマネジャーを務める島崎眞さんが進行しました。
参加した高校生たちは、医療問題に対する深い関心を示しており、CHANGEで行われている研究について事前に調べて考えをまとめており、それぞれの視点から鋭い質問を投げかけました。


CHANGEで進められている開発内容と課題

  1. 呼気による健康診断 … 呼気に含まれる成分分析で病気の早期発見に繋げる。
  2. 老化細胞の除去 … 老化細胞を除去することによる健康寿命を伸ばす。医療費の抑制にも。
  3. マイクロニードル型の「貼るだけ人工膵臓」 … 注射ではなく皮膚に貼るだけで薬物を投与できる技術で糖尿病治療を行なう。
  4. 看護医療へのテクノロジー応用 … 対人看護の負担を軽減する工学技術の利用で看護人材不足を補う。
  5. 医療に関する倫理問題 … これまでにない革新的な医療技術や医薬品の登場への抵抗感や不信感を解消するための倫理の醸成

課題に対して高校生からの考察と意見が投げかけられ、それに応えるように会場のCHANGEプロジェクトで各分野を推進する研究者が回答する形式でセッションが進められました。CHANGEプロジェクトリーダーの一木隆範さんは「オピニオンボードとして高校生から忖度のない指摘をいただいたことはそれだけで価値がある」と評価。世代を超えて柔軟な発想や意見が交わされる有意義なセッションとなりました。

登壇した高校生のプロフィール


羽賀心音さん(洗足学園高等学校 2年)

将来は患者に寄り添う医者になることを志望している。救急医学とAIの連携に興味を持つ。海外での医療ボランティア経験から、世界中の医療問題に関心を抱いており、今一番欲しい技術として老化細胞除去技術に可能性を感じている。

嘉納拓真さん(川崎市立川崎総合科学高等学校 2年)

将来は理系的な視点を活かしたコンサルタントを目指しており、大学では物理や数学、経営工学などの分野を学びたいと考えている。工学が医療にもたらす変化に注目しつつ、人との関わりが減ることへの精神面の影響について懸念点を指摘した。

山本夏々さん(洗足学園高等学校 2年)

新しい治療法や技術の開発に興味があり、大学では研究と臨床の両方を学びたいと考えている。人工膵臓について、患者が自分で血糖値を管理できるようになることで、医療従事者の負担軽減や医療格差の縮小に繋がる点に期待を示した。

冨永帆汰(川崎市立川崎総合科学高等学校 2年)

薬学と経済学を学び、医療分野への貢献を志望している。人工膵臓の技術に強い関心を持ち、その可能性に関心をもっている。看護のテクノロジー化に関しても、患者とのコミュニケーションが希薄になることを指摘した。

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