2025.09.29

第11回 MatriCellフォーラム開催~高校生が細胞実習の成果を発表

2023年8月29・30日の両日、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク 神奈川県藤沢市)を会場に第11回MatriCellフォーラムが開催されました。このフォーラムは、動物の生体内において細胞と細胞の間隙を埋めている物質「細胞外マトリックス」(マトリセル)と呼ばれている細胞外物質について研究する学会です。

30日には高校生による発表セッションが行われ、湘南白百合学園高等学校と神奈川県立横須賀高等学校の生徒が3グループ登壇し、発表しました。

この3グループの発表者はみな、5月にお茶の水女子大学で実施された細胞実習に参加。同大学ヒューマンヘルスケア研究所の宮本泰則教授と橋本恵特任講師の指導のもと、「動物細胞の培養と細胞接着」そこでの実験結果をもとにした発表しました。いずれも細胞接着と細胞形態変化の関連性について、独自の視点から考察を加えた内容でした。





湘南白百合学園高校(グループ1)の発表

BHK細胞をトリプシンで剥がすと、接着剤であるフィブロネクチンが分解され、細胞骨格の収縮により細胞が丸くなることを示した。また、細胞外のフィブロネクチンと細胞内のアクチン繊維が連結することで細胞が伸展し、その形態が変化する。これらの細胞接着による形態変化が再生医療にも役立つとまとめました。

湘南白百合学園高校(グループ2)の発表

動物細胞の形態変化における細胞接着分子の役割を検証している。BHK細胞をトリプシンで剥がすと球状に変化し、細胞骨格が収縮することが示された 。また、フィブロネクチンは細胞接着を促進するが、なくても細胞自身の細胞接着分子によって接着が起こる。細胞接着分子は細胞の形態維持や機能制御に重要な役割を担っていることをまとめました。

神奈川県立横須賀高等学校 科学部グループの発表

細胞接着に関わる物質を用いた動物細胞の形態変化や内部構造を観察することを目的とした実習を振り返りました。トリプシンでBHK細胞を剥がすと、当初の予想に反して細胞は丸い形になった。これは、細胞外マトリックスであるフィブロネクチンが剥がれたためだと考えられる。一方、フィブロネクチンがないディッシュでもわずかに形が崩れる現象が確認されました。このことから、細胞は外部の環境だけでなく、細胞骨格のアクチン繊維によっても形を変えられることが考察される。

このセッションの座長を務めた橋本恵氏は、生徒たちが丁寧に観察して考えを導き出したことを評価。生徒たちは会場の大学教員や大学院生からの質疑にも、冷静にグループで考えをまとめて応答するなど、専門家の見守る中でかなり緊張もあったようですが、堂に入った“学会デビュー”を飾りました。



この日、MatriCellフォーラム終了後にも午後には細胞学に関連したプログラムが行われ、中高生20名ほどが参加し、株式会社ニコン提供の顕微鏡の観察会と、iPS細胞研究者の講演を聴講しました。

顕微鏡観察会では、アイパークの研究棟内にあるニコンのラボで、透過光顕微鏡、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡といった形式の異なる顕微鏡の原理をまなび、実際に最先端研究用の機器で高精細な画像で細胞を観察しました。

市民公開講座『iPS細胞がひらく未来の医療 - 研究者が語る実用化への挑戦』では、オリヅルセラピューティクス株式会社の渡邉幸造氏が登壇し、研究所ではどのようなことが行われているのか、iPS細胞を用いた再生医療がこれからどのように貢献していくのか、また安全で高品質な細胞を製造するために研究所でどのように取り組みが行われているのかという最先端の研究施設の事情が解説されました。

参加した高校生の皆さんからは、細胞学の可能性と最先端の医療について学びを深めることができたとの感想が聞かれ、とても充実した一日となったようです。

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