コラム
2024.09.20
ハマヤクサイエンス研究会第3回学術発表会開催
発表レポート【生物系】
生物分野の発表申込みは最多の27題。生物は人気科目ですね。
研究タイトル「自然うまれの安全たっぷり添加物~辛味食品を添えて~」優秀賞
神奈川県立相模原弥栄高等学校
遠藤春香さん、井上夏希さん
安全で安価な新しい食品添加物の作製を目的とし、防腐作用を示す食用植物であるシソ、ショウガ、ワサビを用いて、豚肉に対する抗菌作用を調べました。それぞれの食用植物の懸濁液や残渣を豚肉へ添加・懸濁し、NO₂⁻、CO₂、pHの測定と微生物検査を行いました。結果として、焼き豚肉ではショウガの懸濁液、ゆで豚肉ではシソの残渣において、NO₂⁻の低下がみられ、食用植物が腐敗を抑制するのに有効な可能性が示唆されました。今後はシソと塩との相乗効果も検証し、食品添加物としての有効性を評価したいと考えています。
優秀賞おめでとうございます
微生物検査において細菌数を数えるのがとても大変だった(2000越え!)という本研究、シソやワサビなど身近な食品を工夫して研究に使用しており、とても面白かったです。なんと去年のハマヤクサイエンス研究会で最優秀賞を受賞したチームの後輩とのことで、先輩方にうれしい報告ができると喜んでいらっしゃいました。おめでとうございます!(編集部より)
PC-01
研究タイトル「あなたは細菌を顔に塗っている?!」特別賞
山脇学園高等学校
佐藤彩華さん、野澤杏奈さん
スキンケアのために塗っている化粧水が肌トラブルに発展するリスクに繋がっている可能性を考慮し、スキンケア用化粧水の蓋に付着した化粧水の水滴に微生物が繁殖しているかを調査しました。市販化粧水8種類の蓋の内側から水滴を滅菌綿棒で拭き取り、寒天培地で培養した結果、微生物の増殖が確認されました。共通して含まれていた成分はジプロピレングリコールやフェノキシエタノールなどでした。化粧水中の微生物は室温で繁殖することがわかり、今後は成分解析を進め、成長を促す成分の特定を目指したいと考えています。
特別賞おめでとうございます
日常的に化粧水を使用しているので、タイトルを見た瞬間から結果がとても気になる研究でした。市販の化粧水は製品だし、なんとなく大丈夫そうなイメージを持っていましたが、微生物がかなり増殖していてびっくりしました。DNA実験の条件検討に苦労したとのお話でしたが、日常に潜むリスクを改めて科学的に検討していただき、ありがとうございました!(編集部より)
PC-02
研究タイトル「乳酸菌と食品の関連性〜乳酸菌の可能性〜 part.3」
常葉大学附属常葉高等学校
石田愛里彩さん
昨年の研究よりガセリ菌を含む0.5%濃度水溶液を与えた植物が著しい成長を示したことから、ガセリ水溶液の濃度と成分が植物の成長に与える影響を調べるため、ガセリ水溶液の濃度を0.1%刻みで細分化してブロッコリースプラウト(植物)へ与え、成分ごとに実験を行いました。結果、ガセリ水溶液の濃度0.5%以下以外のサンプルすべてにカビが発生しました。低濃度ガセリ水溶液では植物の生育は見られたが、カビにより十分な成果が得られませんでした。今後、ガセリ水溶液のカビ抑制効果を検討していく予定です。
PC-04
研究タイトル「乳酸菌の酸に対する短時間浸漬の確認と繁殖能力への影響」
藤沢翔陵高等学校 科学部
小林真広さん、菊池悠人さん、卜部瑞生さん、大橋輝さん
近年、乳酸菌が腸まで届くと謳われる健康食品が注目されていますが、乳酸菌は強い胃酸を通過する必要があります。本研究では、乳酸菌が酸に短時間浸漬された際に生存して腸に届くのか、またその後の繁殖率を確認することを目的として実験を行いました。乳酸菌を異なるpH、時間、菌量で酸(酢酸、塩酸)に浸漬後、酸を流して培養し、生存と繁殖を評価しました。実験結果より、塩酸に浸漬した場合に乳酸菌が死滅しない条件が確認されたため、ヒトが摂取した乳酸菌は生きて腸まで届いている可能性が示唆されました。
PC-05
研究タイトル「アスコルビン酸が植物の成長に与える影響」
神奈川県立生田東高等学校
佐藤希海さん、山﨑佳乃さん、井上凜香さん、部原愛心さん
アスコルビン酸が植物に与える影響を調べるため、異なる濃度のアスコルビン酸溶液を用いて、発芽と成長を観察しました。0.1%アスコルビン酸溶液で育てたブロッコリースプラウトの発芽と成長が最も早かった一方で、10%や1%では腐敗が見られました。0.01%前後のアスコルビン酸は植物の発芽や伸長を促すが、1%を超えると植物の生長や発芽を抑制させる働きがあることが確認できました。光を当てない栽培では0.01%のアスコルビン酸添加が有効であると考えられます。
PD-01
研究タイトル「アイスプラントのホウ素含有量と土壌中の塩化ナトリウム濃度との関係」
優秀賞
兵庫県立神戸高等学校
飯田悠介さん、神﨑亮志さん、平松拓海さん、吉岡稜太郎さん
アイスプラントのホウ素含有量と土壌中の塩化ナトリウム濃度の関係を調査しました。アイスプラントを育てるプランターで、ホウ素を17mgまたは45mg与え、塩化ナトリウムを20g追加するプランターと追加しないプランターで育成しました。結果、ホウ素45mgのプランターでは、塩化ナトリウム濃度が高いとホウ素含有量が有意に増加しました。塩化ナトリウムがない土地では、アイスプラントはホウ素を積極的に排出する機構を持つと考えられ、塩化ナトリウムがある場合はホウ素を体内に貯める機構が発達する可能性が示唆されました。
優秀賞おめでとうございます
アイスプラントの生育環境における環境応答の変化について、わかりやすくまとめられており、大変面白かったです。個人的にアイスプラントってなんでしょっぱいのだろう?と疑問に思っていたのですが、その謎も一緒に解消できたので、とてもありがたかったです。(編集部より)
PD-02
研究タイトル「サウンドベジタブル2024」
山脇学園高等学校
一色優希さん、渡部真衣さん
特定の周波数音がクレソンの発芽率や成長に与える影響を調査しました。900Hzと18000Hzの音を55dBおよび66dBで流し、音なしの状態と比較しました。55dBでは茎の長さに違いは見られませんでしたが、66dBでは900Hzが最も茎が長く、音なしや18000Hzより優れた成長を示しました。発芽率には差がなく、音環境下では子葉が丸まる傾向がありました。900Hzの音が成長を促進する可能性があり、発芽率への音の影響はないと考えられます。子葉の変化については今後さらに詳しく測定、検証する予定です。
PD-03
研究タイトル「植物の“血液”型?」
神奈川大学附属中・高等学校
田畑美桜さん、乾辺怜那さん、草薙あおいさん、幸田茉花さん、田中楓さん、竹渕和仁さん、南部公仁子さん、福田菜心さん、山田結々さん、松澤優吾さん、田村紗也花さん、篠原咲南さん、杉森天音さん、相馬結衣花さん
動物の血液型は赤血球上の糖鎖が関係しており、植物にも糖鎖が存在するため、植物も血液型のような分類が可能であるかを検証しました。試料となる植物(ジャガイモ、ニンジン、キュウリ、キャベツ、ダイコン、セロリ、イヌツゲ)を細かくすりつぶし、遠心分離した液体を用いて、ガンマクローン抗A、Bと反応させました。その結果、セロリとイヌツゲで凝集反応が見られましたが、他の植物では反応が確認できませんでした。今後は、顕微鏡下で凝集反応の詳細を観察し、プロトプラストを用いた追加実験を予定しています。
PD-04
研究タイトル「組織培養による「メンデルのブドウ」の再生」
神奈川大学附属中・高等学校
草薙あおいさん、南部公仁子さん、福田菜心さん、相馬結衣花さん、杉森天音さん
発表者らの学校にあるブドウ「メンデルのブドウ」の新個体をカルス化させるため、実験を行いました。実験1では、殺菌時間を変えた培地でマスカットの芽を培養し、殺菌時間が5分で奇形葉や多芽体が見られました。実験2では、継代培地に移植し、カルス形成を確認しました。実験3では、発根培地で観察しました。2回目の実験では、殺菌時間を5分から20分に変えましたが、全てコンタミネーションしました。1回目の結果から、殺菌時間は5分以上が望ましく(要再実験)、カルス化にはBA濃度の高い培地が適していると考えられます。
PD-05
研究タイトル「ホップサステナビリティ」
神奈川大学附属中・高等学校
島津響さん、伊藤葵さん、渡司陽菜さん、中山詠介さん、富岡万裕さん
ホップの品種選定を行い、持続可能なホップ栽培プロジェクトの実施を検討しました。中山、横浜、みなとみらいの3キャンパスでホップの栽培を行い、生育環境の違いを調査しました。官能調査で人気の香りを特定し、精油を抽出、13種類のホップでVPS遺伝子とCHS-H1遺伝子を分析し、α酸含有量を測定した結果、横浜キャンパスは生育が遅く、最も好まれた香りは信州早生でした。VPSとCHS-H1は9品種で検出され、チヌークがα酸含有量と香りの両方で優れていました。チヌークの商品化が最適であると考えられます。
PD-06
研究タイトル「クマムシにおけるトレハロースと樽化からの復活率の関係」
神奈川総合産業高校
上田千鶴琉さん、伊藤瑠乃さん、清田晄孝さん
本研究の目的は、トレハロース溶液の濃度とクマムシの樽状態からの復活時間、生存率の関係を明らかにすることです。クマムシを異なる濃度(0%、1%、3%、5%、10%)のトレハロース溶液に浸し、休眠状態にした後、純水で復活させ、復活時間と生存率を調査しました。結果として、溶液のトレハロース濃度が高いほど復活時間は長くなりましたが、生存率には変化はありませんでした。5%の濃度でのみ復活時間が短かった理由は現在調査中です。
PE-01
研究タイトル「ミドリムシの培養条件」
三浦学苑高等学校
高橋蓮さん、黒田綾人さん
ミドリムシの効率的な増殖を目指し、培養条件として温度に着目して実験を行いました。500mLのペットボトルにミドリムシの培養液を分け、①小型扇風機で冷却、②常温、③ペット用ヒーターで加熱の条件で培養し、ImageJでミドリムシの色の面積を測定しました。全ての条件でミドリムシの増殖は確認されましたが、他の生物の混入も見られました。①の条件が最も多く、③が最も少なかったものの、温度調節が不十分だったため、冷却による増殖の効果は不明であり、今後のさらなる検討が必要であると考えられます。
PE-02
研究タイトル「倉敷市内における外来産のカメの冬眠」
山脇学園高等学校(山脇有尾類研究所)
内村眞香さん、山﨑春奈さん
現在、日本ではミシシッピアカミミガメとクサガメという2種の外来種の個体数が在来種を上回り、ハスの食害や遺伝子汚染などの問題が報告されています。これらの外来種の冬眠習性を把握するため、岡山県倉敷市での行動データから冬眠期間を特定し、傾向を比較しました。ミシシッピアカミミガメは早期に冬眠を始め、冬眠期間も長いのに対し、クサガメは冬眠開始が遅く、期間も短かいという結果が得られました。この違いは原産地の気候に起因し、体の大きさと冬眠開始時期には関係がないと考えられます。
PE-03
研究タイトル「菅生地区におけるセミと樹種の関係性」
東海大学菅生高等学校
山村実優莉さん、鈴木結友さん、川島廉陽さん、原田暖太さん、吉野泰雅さん、植松凛久さん、髙山琴音さん
セミの鳴き声は古くから夏の風物詩として親しまれ、都市部でもよく聞くことができます。本研究は、東京都あきる野市菅生地区におけるセミ科の分布と樹種の関係を明らかにすることを目的としました。セミが好む樹種の周辺でセミの抜け殻を数え、種を同定し、分布を比較しました。菅生周辺では杉でニイニイゼミがみられ、桜でアブラゼミ、ミンミンゼミがみられました。大田区ではクマゼミが多く見られ、蜜柑の木に集まっていました。この結果から、樹種、そして、地域もセミの種の分布に関係していると考えられます。
PE-04
研究タイトル「ザリガニが最も好むエサと温度の関係性」
東海大学菅生高等学校 自然科学部
倉内柊真さん、佐野陽一さん
本研究では、アメリカザリガニ(Procambarus clarkii )が最も好む餌と温度の関係について調査し、ザリガニを捕獲にするにあたり一番適している餌を発見することを目的に実験を行いました。2024年6月に東京都瑞穂町で捕獲した固体へ加熱または非加熱で処理した6種類の餌を与え、比較を行いました。実験結果から、加熱した食品への食いつきがよいことが明らかになり、食品を加熱することで溶けだしたうま味成分にザリガニが惹かれていることが示唆されます。
PE-05
研究タイトル「エンマコオロギの羽化はすごい」
神奈川県立相模原弥栄高等学校
酒井道崇さん
本研究では、エンマコオロギ(eleogryllus emma) の行動の要因ついて検証を行いました。エンマコオロギの壁の傾斜による行動の変化を検証したところ、0-60°の傾斜では足場の素材に関係なく登る速度に変化がなかっため、重力走性が関わっている可能性が示唆されました。また、行動に規則性がみられるのかを検討するため、ダンゴムシでの実験を再現した迷路により交替制転向反応の有無を検証したところ、交替制転向反応は見られませんでした。今後、個体数や実験試行回数を増やし、再現性をとっていく予定です。
PG-01
研究タイトル「9種類の方法でチャレンジ 最適な骨格標本の作り方」優秀賞
神奈川県立川崎高等学校
須藤寿美さん
発表者は亡くなった動物を安全かつ簡単に骨格標本にする方法を探ることを目的とし、9種類の方法(濃・排水口洗浄剤法、ミルワーム法、薄・排水口洗浄剤法、土埋没法、入れ歯洗浄剤法、アルコール法、煮込み法、野ざらし法、砂埋没法)で除肉を行いました。実験の結果、入れ歯洗浄剤法が最も簡易で安全に除肉できることが分かりました。入れ歯洗浄剤はタンパク質汚れだけを分解し、更に歯を守る用途で使用されていることもあり、動物標本の除肉の際も骨を守ることができるのではないかと考えられます。
優秀賞おめでとうございます
昨年の神奈川新聞社賞に引き続き、受賞おめでとうございます。(検討した除肉方法が増えていますね!)発表者が制作した骨格標本がずらりと並べられた中での発表は非常に説得力があり、実験や制作で実際に手を動かした重みを感じました。これからもさらなる技術向上に期待しています。(編集部より)
PG-02
研究タイトル「昆虫の生態に合わせた展示法」
東京都立農芸高等学校
中山誠太さん、鈴木聡さん、千吉良漣さん、寺松和摩さん、部谷健太さん、衛藤優吾さん、髙岡昴琉さん、服部鑑成さん、深瀬琳久さん
昆虫の展示企画の多くは博物館で行われ、分類や展示方法は多様です。本研究では自然な状態の昆虫を観察、生態を知ることができる展示法を見出すことを目的とし、生きた昆虫を昆虫の生態に従ってレイアウトする方法を検証しました。昆虫の生態に基づき、狭いスペースでも観察しやすいレイアウトを考案し、観察者の目線を考慮した視覚的に優れた展示を実現させることができました。生態に合わせた展示により観察が容易になり、生態の研究活動の向上に繋がりました。今後はデザイン性の向上と、昆虫に親しむための展示法も検討していきます。
PG-03
研究タイトル「土壌生物の生息環境調査」
神奈川県立川崎北高等学校 科学部
黒澤東吾さん、種村空さん、種市柊天さん
土壌生物は土壌の性質に大きな影響を与えますが、土壌生物学はまだ未解明な部分が多く、研究が必要です。本研究では、校内、竹林、公園から採取した土を試料とし、ツルグレン装置を用いて生息環境と土壌の関係を詳しく調べました。保水力が高い場所では土壌生物の個体数が少なく、低い場所では多い傾向が確認されました。保水力が大き過ぎると、雨後に呼吸が困難になる可能性が示唆されました。今後は、土壌生物の種類と土壌のpH、有機物との関係をさらに調査する予定です。
PG-04
研究タイトル「せんべいに使用されているコメの種類はDNA分析で判断できるか」
神奈川大学附属高等学校
伊藤葵さん、相馬結衣花さん
市販のせんべいからDNAを抽出し、原料がうるち米かもち米かを判断することを目的として、実験を行いました。うるち米または、もち米を原料としたせんべいからDNAを抽出し、もちうるち判定プライマーを用いてPCRと電気泳動を行いました。結果として、もち米由来のせんべいには138bpおよび186bpのバンド、うるち米由来のせんべいには163bpのバンドが確認されました。23bpの重複変異部位を持つもち米のせいべいについては、今回使用したプライマーを用いたDNA分析方法で判別できます。
PG-05
研究タイトル「日本から渡ったエジプト米「Yabani」の起源解明」神奈川新聞社賞
神奈川大学附属高等学校
相馬結衣花さん、杉森天音さん、清水匠さん、富岡万裕さん、草薙あおいさん
エジプト米Yabaniの子孫品種と日本米のDNAを比較し、Yabaniが日本米のどの系統から派生したかを検証しました。旭や陸羽20号などの品種からDNAを抽出し、PCRと電気泳動、DNAシーケンス解析を行いました。結果、Yabaniの中でもPとYM7が他と異なるバンドパターンを示し、特に愛国と陸羽20号はYPやYM7と塩基数が近く、陸羽20号がYabaniに近い遺伝子を持つことがわかりました。愛国からYabaniが生まれ、現地で選抜される際にYPとYM7、YM5とYM47に分かれたと推察されます。
神奈川新聞社賞おめでとうございます
エジプト米「Yabani」が日本米のどの系統から派生したかという謎に対し、遺伝子から迫っていくという興味深いテーマの研究でした。起源だと考えられる日本米からさらに現地で品種が枝分かれしているところまで推測できるのが面白かったです。今後もさらなる研究の発展を楽しみにしています!(編集部より)
PG-06
研究タイトル「カブトエビの孵化の謎」
山脇学園高等学校 サイエンスクラス2年(有尾類研究所)
伊勢桜瑚さん
生理・生態に不明点が多いカブトエビの安定的飼育を目標とし、本研究ではカブトエビ育成キットに入っている「カブトエビの栄養」の有無が孵化に与える影響について検討しました。キットに同封された「栄養」を加えた場合と加えない場合で比較し、両方で孵化が確認されたことから、「栄養」の有無は孵化に影響しないことがわかりました。また、容器の場所による光の当たり具合が孵化数に影響している可能性があると考えられるので、今後は「栄養」の投入量の影響を更に調べると共に、明るさと孵化との関係を明らかにしていく予定です。
PH-01
研究タイトル「Developmental stages of Hynobius dunni ~From data collection to completion~」サイエンス学びラボ賞
広尾学園高等学校
新明結さん
オオイタサンショウウオは大分県を中心に生息し、2022年に絶滅危惧Ⅱ類に指定されました。これまでクロサンショウウオの発生段階図が基準として使用されていましたが、オオイタサンショウウオ独自の発生段階図表を作成する必要があると考え、2006年から2024年までのデータを基に新たな発生段階図表を作成しました。その結果、クロサンショウウオとの相違点が見つかり、特に後半の発生段階で大きな違いが確認されました。この新しい発生段階図を基に、さらにオオイタサンショウウオの研究を進めていきます。
サイエンス学びラボ賞おめでとうございます
本発表のポスターを拝見した時に驚いたのは、ポスター1面に掲載されていたオオイタサンショウウオの発生段階図表でした。すべて発表者ご自身の手で描かれたそうです。発表内容も素晴らしく、英語での口頭発表も非常に見事でした。これからの成長が楽しみな期待の研究者です!(編集部より)
PH-02
研究タイトル「ニワトリの卵から多能性幹細胞を樹立する」
神奈川大学附属高等学校
杉山陽向さん、戸塚渉莉さん、中村仁香さん、小泉由律さん、古川ことのさん
ニワトリの有精卵から細胞を特定して培養し、その細胞が多機能性幹細胞としての性質を持つかどうかを検証しました。ニワトリの有精卵より摘出した胚の細胞を培養し、アルカリフォスファターゼ染色を行いました。実験の結果、わずかではありますが、アルカリフォスファターゼで青紫に染色された細胞によるコロニーのような集合体がいくつか確認できたことから、ニワトリの有精卵から多機能性をもつ細胞を発見できたと考えられます。しかし、分化までは確認できておらず、樹立に至っていないため、引き続き培養を続けていく予定です。
PH-03
研究タイトル「スズメが口笛に反応する理由」
逗子開成高等学校
石渡戸優さん
スズメの行動を深く理解し、人間と鳥が共存できる都市開発を目指し、口笛や笛の音がスズメに与える影響を調査しました。公園にスピーカーを設置し、周波数や音色を調整した音を流し、スズメたちの挙動を観察しました。スズメが集まる条件として周波数と音色、離れる条件として周波数が影響することがわかりました。スズメは集まる時は離れるときに比べ、警戒心が強くなり、行動するための条件が多くなるのではないかと考えられます。今後は、周囲の環境音などにも着目し、どんな音がスズメに影響を与えるか、調査をすすめていきます。
PH-04
研究タイトル「ヒラオヤモリの体色変化について」
三浦学苑高等学校
髙橋理央奈さん、相部凛空さん
ニホンヤモリと比較してヒラオヤモリの体色変化についての先行研究が少ないことから、本研究では、ヒラオヤモリの周囲の環境変化または、空腹時と給餌後においての体色を観察することを目的としました。ヤモリに番号を付け、以下の実験を実施しました。(1) 色画用紙で覆ったケースにヤモリを入れ、5分後の色を測定、(2) 3日間の空腹状態と餌を与えた後の色変化を比較しました。実験結果として、色の数値に変化はあったものの、目に見える色の変化は確認できませんでした。実験個体数を増やし、再度データをとり進める予定です。
PH-05
研究タイトル「生存に不利な進化」
北鎌倉女子学園高等学校
飯田佳音さん、竹脇絹代さん、栗田結衣さん
バビルサの牙や孔雀の羽など、一見生存に不利な特徴を持つ動物の進化について調べました。国内外の文献によると、優良遺伝子説(魅力的なオスが選ばれる)、同性間淘汰(オス同士の争い)、異性間淘汰(メスが顕著なオスを選ぶ)、ランナウェイ説(メスの選り好み)、ハンディキャップ理論(非適応な進化の説明)などが進化の理由とされていました。これらの特徴は生存に不利に見えますが、動物は子孫繁栄を重視し、配偶者に選ばれるための進化を遂げていると考えられます。
PH-06
◆ハマヤクサイエンス研究会 第3回学術発表会 ほかの研究分野の発表を見る
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