2024.11.21

【イベントレポート】今年も行ってきました!サイエンスアゴラ2024

今年も行って参りました、サイエンスアゴラ2024 (主催:科学技術振興機構)。今年も東京・お台場のテレコムセンターを会場に10月26、27日に2日間にわたって開催されました。科学と社会をつなぐオープンフォーラムとして、研究者と市民とが対話する機会となるこのイベント、科学とともに未来をどう創っていくかを考えるための様々な展示やセミナーが繰り広げられていました。
出展者は企業や研究機関、学校法人から有志グループまで、ジャンルも幅広く、参加して学べるプログラムは150以上。そんな中からごく一部ですが、紹介したいと思います。


福井県立大学恐竜学研究所、JST-RISTEX
「バーチャル技術で学んで楽しむ未来の恐竜学」

会場入口を抜けてすぐに恐竜の目立つビジュアル!
恐竜の化石の発掘3Dプリンターで再現した恐竜の化石など、一気に惹き込まれます。
30年以上にもわたり、恐竜の化石発掘と研究に実績を重ねてきた福井県では、2025年4月から新たに福井県立大学に恐竜学部を設立。恐竜のいた時代の環境を知り、地球と生命の歴史を学ぶことは、温暖化による自然災害など、現代の地球環境を研究する上でも活かされるはずです。

テクノシア
「AIロボット共生社会 ~”ノン”が居る未来を覗いてみる~」

Chat-GPTや配膳ロボットなどAIやロボットが身近な存在になってきた現代。AIロボットと人間が共生する社会は一体どんな様相なのかを考え、紹介するブースを展開するのは、キャラクターコンテンツ「テクノ少女」を運営するテクノシア。AIロボットの「ノン」と音声やチャットを通じた対話体験や、コミュニケーションロボ「NICOBO」に触れる体験ができました。
ブース等のイラストには当サイト「らぼのーと!」漫画家のAyaneさんも参加していたぞ!


メルカリ R4D
「めぐる・つながる・ひろがる〜未知なる価値への冒険〜」

フリマアプリの会社がなぜサイエンス?と思いきや、メルカリはフリマだけにとどまらず、限りある資源を循環させ、あらゆる人が可能性を発揮できる未来を目指し、研究開発組織「mercari R4D」を有しているのだ(フリマも循環型社会実現の一環といえますね)。今回の出展では「”木のパズル”で学ぶ木材の循環」、「”検索”から考えるあらゆる人が参加できる循環型社会」「”学び”の循環ガチャ」など、研究をベースにしたクエストを通じて来場者との対話を試みていました。


駒澤大学 医療健康科学部 近藤研究室
「2次元の医療X線画像から3次元に復元する技術を体験しよう!」

「診療放射線技師」資格取得を目指し、専門知識と技術を持つプロフェッショナルを育成する駒澤大学の医療健康科学部からは近藤啓介教授の研究室メンバーが参加。
教育用に開発した医療放射線の仕組みや2次元画像から元の3次元構造を解析する方法を再現する放射線教材ファントムを使った体験で、医療放射線の仕組みや2次元画像から元の3次元構造を解析する方法を学べました。


聖学院・女子聖学院(GX・DXユニット)
「最新のものづくり・日常とリンクしたSDGs体験」

高校生による研究発表も見られました。聖学院中学校高等学校、女子聖学院中学校高等学校では資源と環境問題を考えるSDGsプロジェクトの活動報告を発表。エネルギー問題を考えて学校内で夏のエアコンの設定温度を計画的に下げることによる電力量削減の実践や、学校屋上に設置した太陽光発電パネルによる発電を通して、資源エネルギー問題について当事者意識を持つようにする啓発活動を報告してくれました。

猛禽類保護センター・鳥海イヌワシみらい館
「温故知新?自然再興でイヌワシ最高!」

イヌワシをはじめとする希少な猛禽類を対象に調査研究、保護推進、普及啓発を行う拠点として、山形県・秋田県境、鳥海山南麓にある鳥海イヌワシみらい館も展示を行いました。近年個体数が減少し、絶滅が危惧されているイヌワシに焦点を当て、「ネイチャーポジティブとは何か?」「自然を守るために私たちができること」について考えます。館内を練り歩くイヌワシ君も人気!


東京海洋大学 WANTED:REDプロジェクトチーム/江戸前ESD協議会/海の研究戦略マネジメント機構
「スマホを使って赤潮を観察してみよう!」

海中のプランクトンの大量発生によって発生する赤潮。漁業などにも打撃を与える環境問題への対応が課題となっています。赤潮は海水の「富栄養化」によって発生しますが、その原因として、プランクトンの栄養が産業や社会生活環境の廃棄物に含まれる窒素やリン酸であることから、社会問題としても向き合っていく必要があります。いまだ赤潮の発生予測は難しいため、解明に向けた研究を進めるためにも、観測情報を集約する市民との連携が呼びかけられています。展示ではスマホカメラでプランクトンを撮影することができました。


立教大学 理学部 SCOLA
「ダリの”め”美術館 〜AIと私の未来を語る展〜」

いろいろな切り口で生成AIをテーマにした企画も目立ちました。
立教大学 理学部 SCOLAは、生成AIによってつくられた“絵画”を鑑賞し、感じたものを表現し、考察し、その絵がしめしている未来の科学技術について考察する鑑賞型対話ツールを展開していました。見たところ不思議な絵図。これは何を表しているのだろう…


Water Cityプロジェクト
「海面上昇想像図 ~AIと想像する2300年の東京~」

地球の温暖化とともに起こっている海面上昇。国連期間IPCCの示す「最悪のシナリオ」では、西暦2300年には、海面が現在よりも15メートル上昇するとの予測も立てられています。そんな「15メートル海面が上昇した」想定の東京湾周辺の衛星写真を制作したシュミレーションがシビアだけど面白い。現在の沿岸都市部が水没し、すっかり様子が変わった海岸線と、そこで営まれている都市生活・・・天気の子のラストみたいな世界観に思いを馳せます。


福島イノベーション・コースト構想推進機構
「イノベーションでFUKUSHIMAが変わる」

2011年の福島第一原発の事故から13年。今月初めて原子炉跡から燃料デブリ回収のニュースが報じられたところですが、廃炉作業は現在も続いています。放射線による甚大な被害を受けた福島県の浜通り地域では、産業の回復とともに新たなイノベーションを起こす拠点として様々な国家プロジェクトが始まっています。世界的な課題とも言える原発の廃炉をはじめ、ロボット・ドローン開発、リサイクルエネルギー開発、医療、宇宙開発などの実験場として多くの学術機関や企業も集結。
科学の負の象徴とも言える原発事故が起こった地で、人類と地球の未来のための新たな科学の挑戦が始まっています。

今年は能登半島地震にはじまり、近年さらに被害が甚大になっている集中豪雨など、災害がより頻度が高くなっていくことともに、環境問題もより課題感が高まっています。
また、人口減や社会構造の変化が著しくなっていく中、社会のなかでAIやテクノロジーの利活用はますます増えていきますが、どのように関わり向き合っていく必要があると思います。
そうした時代の変化の中にあり、2024年のサイエンスアゴラもまた、全ての研究発表がこうした時代背景の中で新しい希望に繋がる可能性を示していました。

過去のサイエンスアゴラのレポートもどうぞ。

この記事をシェア!

▲